古川由彩

水影とトマト – 古川由彩

ベランダの手摺 水を弾く音
慌てて部屋を飛び出した
服を取り込んだ僕は
濡れた前髪を直した

走り出すランドセルが
辿る道を色付けていく
しわくちゃのシャツ畳んだら
あの頃の君の声が聞こえた

揺れた君と僕の水影
焼けた肌が眩しく見えた
あの日の君の瞳と言葉
巡る 夏の雨

夏休みの宿題 観察日記
2人で育てたトマトは
赤く熟さないまま
いつの間にか落ちてしまった

またいつかねと手を振る君はまだ来ない
巡ってきたこの季節の中 僕はまた 1つ
君から遠のいていく

錆びた手摺 物干し竿
褪せた色の鉢植え 1つ
トマトのように 弾けて散った
君と僕の夢

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