南波志帆

カノープス – 南波志帆

どうしてここに来たの?
どうして泣いてるの?
叶わない事は いくつあるの?
胸に問い掛けては掻き消す

小さな窓開ければ
東京の物憂げな
むらさきの夜空
他人のようで
そらすたび どこかうしろめたくて

一番遠い星に願いをかけるように
あの頃はただ
果てぬほど 私は私の強さを信じてた
二十歳前の、カノープス

幼い頃にママに 聞いた冬の神話
南の夜空に 瞬く星
舟達を導いた カノープス

どんな些細な事も 恋をなくした日も
パジャマに毛布で 白い息で
窓の向こうの明日を探した

なにもおそれず 空を見上げて笑っていた
あの頃のように
もう一度 私は私の弱さを拭いたい
20年目の、カノープス

都会のビル街を
灯した星の光
きっと
いつしか
夢見ることさえも
誰かにゆだねてた

幻の星に祈りを捧ぐように
あの頃はただ
果てぬほど 私は私の強さを信じてたの

迷わずに空を見上げて笑っていた
あの頃のように
もう一度 私は私のすべてを信じるの
そのときには また導いて
私の中にいる星、カノープス

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