十五少女

死にたいと言ってくれ。 – 十五少女

青空が目を刺すなら 夜を追って歩こう
夜の静寂(しじま)に溺れそうなら 砂粒を数えよう
砂浜に埋もれたいなら 明日、海を見に行こう
約束だよ。明日、また会おう

水に映る影が醜いなら 地に傘を差そう
春の緑(アオ)に怯えるなら 鳥になって北へ翔けよう
風の歌が身を裂くなら 叫び声で掻き消そう
君の歌を 叫んでよ

苦しみを叫ぼう 虚無を叫ぼう
自己嫌悪を孤独をもどかしさを叫ぼう
人生の無意味も存在の無価値も不条理も
僕が聞くよ だから、何度でも
死にたいと言ってくれ。
声をもう一度 聞かせてくれよ

他人(ヒト)の幸せが眩しいなら 引き裂いてやろう
花の美しさが切ないなら 踏み躙(ニジ)ってやろう
子供の無垢が惜しいなら 溝(ドブ)に突き落としてやろう
君の傷を 叫んでよ

憎しみを叫ぼう 悪を叫ぼう
自己犠牲に酔い痴れて善人ぶるなよ
降りたての雪が儚いなら 君の足跡で穢してやれよ
いいんだよ。だから、もう一度
生きたいと言ってくれ。
声をもう一度 声を

哀しみの声を
躊躇(どまど)いの声を
羨みの声を
風のような声を
朝焼けの声を
歓びの声を
君のその声を
声を

悲しみを叫ぼう 空に叫ぼう
悔しさを絶望を無力を叫ぼう
逃げたくて痛くて生きたくて、救いを乞う自己矛盾を
僕も叫ぶよ だから、何度でも
死にたいと言ってくれ。
声をもう一度 聞かせてくれよ。
目をもう一度 開けてくれよ。

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