北野まち子

  • 夫婦風ごよみ – 北野まち子

    かじかむ指で 暦(こよみ)をめくりゃ師走の風を あなたがかばう苦労七坂 ふたり連れ今日まで来ました 泣き笑い齢(とし)を重ねる そのたびに夫婦(めおと) 二文字(ふたもじ) 重なってあなたはわたしね わたしはあなた 黙っていても あなたがわかる布団の中で かくした涙上手い世渡り しなくてもいいのと背中に 頬(ほほ)寄せたどこか似ている 不器用さ夫婦(めおと) さだめが つながってあなたの涙は わた…

  • 雪ごもり – 北野まち子

    小雪が肩まで 降りかかるやさしく ああ 払って くれた人それが最後の 恋でした冬の駅あの日ふるさと 捨てられずいまも 純な心で 雪ごもり いつかは帰って くれますかさみしく ああ 列車が 連れてった春が来ないの あの日からいつまでも花が咲いても 笑えずにいまも 消えぬ面影 雪ごもり 雪解けせせらぎ 水の音あなたの ああ 耳まで 届いたら手紙ください 待ってますひとりきり胸に抱かれて 泣くまではいま…

  • ひぐらし晩歌 – 北野まち子

    幾星霜(いくせいそう)の 命を継(つな)ぎ今年もこの花 咲いている生まれ故郷の 小さな露地に誰が植えたか 秋桜が今も咲いてて くれるでしょうか今日もどこかで またひぐらしが故郷(ふるさと)恋しと ああ哭(な)いている 浮き世の冷たい 仕打ちに負けて何度(いくたび)心が 泣いたやら故郷(こきょう)の空に 似たよな星に祈るさびしい 夜があるすがりつきたい せつない夜が今日も遠くで またひぐらしが母さん…

  • 高瀬川慕情 – 北野まち子

    鴨川(かも)の流れと 高瀬の桜ふたりで歩いた 木屋町で行き交う人に あなたを重ねひとりたたずむ 古都の町今日も静かに 夜(よ)が更ける心さみしい 高瀬川 涙あふれて 流れる川もいつかは本流(もと)へと もどるのにもどるあてない 運命(さだめ)の悲恋(こい)か逢瀬重ねた 古都の町想いつのらせ 夜が更けるひとりぼっちの 高瀬川 つらい涙が 川面をゆらす乗せてはくれない 高瀬舟明日(あす)を待ってる こ…

  • 面影の花 – 北野まち子

    今日はきれいに 薔薇が咲いている空の彼方に ある日突然 君は行ってしまった面影が赤く赤く 薔薇に宿るから何も知らない少女のような 君の笑顔思い出す薔薇よ薔薇よ 明日もきれいに 咲いておくれ薔薇よ薔薇よ 心をなぐさめ 咲いておくれ 涙流せば 百合がうなずくよ空の彼方で 僕を今でも 君はきっと見てるね面影が白く白く 百合に香るから少し乱れた前髪触れる 君の仕草思い出す百合よ百合よ 明日もきれいに 咲い…

  • ほほえみ坂 – 北野まち子

    いつも笑顔が うれしいとあなたの言葉に ほほえみ返すつまさき立ちの おんな坂雨の日風の日 幾年(いくとせ)か涙があるから 笑うのよ笑顔をあなたに あげたくて 齢(とし)を重ねる 人生は幸せだけでは 越えられなくてよどんだ川も 月明かり水面に冴(さ)え冴(ざ)え 化粧する涙をかくして 紅の筆笑顔がまぶしく 見えますか 桜吹雪に 舞う紅葉きれいな季節は 短いけれどどこまで続く おんな坂苦労をよこせと …

  • 林檎の里 – 北野まち子

    根雪が溶けて 林檎の花が咲いて嬉しい 北の町今日の苦労も いつの日かきっと花咲く 時が来る浮かぶ綿雲 ゆらゆらと巡る季節の 春霞 春霞 木洩れ日揺れる 林檎の畑どんとそびえる 岩木山何があろうと くじけずに明日を信じて 一歩ずつ波も遙(はる)かな 日本海巡る季節の 夏の空 夏の空 たわわに実る 真っ赤な林檎鳥の囀(さえず)り 丘の上夢が心に あるかぎり生きて行きます しっかりと天の恵みを かみしめ…

  • 浮き世橋 – 北野まち子

    明日(あす)のことさえ 手探(てさぐ)りでひとりため息 ついた夜この世に流れる 苦労の川を越えて行きます ひとつずつせめて人並み 幸せを夢見て渡る 女の浮き世橋 泣いて別れた あの人はどこで今頃 どうしてる心に流れる 思い出川に揺れてせつない 恋ひとつ遠い面影 この胸に浮かべて渡る 女の運命(さだめ)橋 他人(ひと)の優しさ あたたかさにじむ涙の 嬉し泣きこの世に流れる 情けの川を越えて来ました …

  • 恋々津軽 – 北野まち子

    お岩木山の 列車の窓に林檎(りんご)の花が 出迎える 出迎える心に根雪 積もったら帰っておいで この家に恋々津軽(れんれんつがる)は 春もよう まつりの山車(だし)が まぶたに浮かびふるさとなまり 口に出る 口に出るやさしい母の 真似をして踊った夜は いつの日か恋々津軽の 紺がすり じょんから三味の 音色が響くはじけて強く しなやかに しなやかにみちのく気質(かたぎ) いつまでも覚えておけと バチ…

  • 風待みなと – 北野まち子

    一夜(いちや)泊りの あの人も波が静まりゃ 船を出すここは下田の 赤い灯がつく 風待(かぜまち)みなと帰って来てよと 言い出せなくてせめて笑顔を 餞(はなむけ)に 石廊崎(いろうざき)から 来たという海の男は 甘えんぼ飲んで騒いで つらさ忘れて 風待みなと入船出船は 馴れっこなのと涙見せずに 紅をさす 一期一会の 人だから無事を祈って 酒を注ぐ待てば嵐も きっとおさまる 風待みなと折れそな心を 寄…

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