北条美樹

化粧 – 北条美樹

女が口紅 ひくときは
みれんに区切りを
つけるとき
道頓堀の 花に群る
遊蝶たちとの 人情芝居
顔で負けても 色で勝つ

女が黒髪 切るときは
涙と一線 画すとき
宗右衛門町の 昔泣かせた
痛みも忘れた あいつの前を
笑い顔して 歩きたい

女が着物を 着るときは
ときめく相手に
出逢うとき
堂島川の 橋を渡れば
お初徳兵衛の 悲恋の歌が
いまもきこえる おぼろ月

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九官鳥 – 北条美樹

あなたの愛から旅発つ午後は朝から無口な 九官鳥(きゅうかんちょう)おしゃべり上手な鳥だけど別れの気配も 分るのねさよなら言わずに出て行くわあなたも黙って見送って

夢桜 – 北条美樹

生きてく勇気が ふたりにあれば手探り人生 ねえ いいじゃない貧乏 貧乏ぐらしは なれっこだからあんたのその手のぬくもりだけで日陰の小さな つぼみでも明日に咲きま

戻り橋 独り唄 – 北条美樹

戻りを待って 三十路を越えた女は京の 橋の上なのに男は 他国の空で妻をむかえて いるとゆうつらい噂が 噂ばかりがああ 戻り橋 なみだ橋まぼろしだけの 逢瀬を待っ

夢情の宿 – 北条美樹

好きで添えないこの世の恋の運命の辛さに貴方を責める嘘で書いた宿帳の妻と言う字のその上に落ちる涙が 止まらないふたりぼっちの夢情の宿よゆかたを羽織る貴方の背中切な

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