北川裕二

宵待草の女 – 北川裕二

かすかな音を たてて咲く
宵待草は 哀愁の花
せめて せめて 百日 愛せたならば
命捨てるよ この恋に

別れ話に うなづいて
眠った頬(ほほ)に 涙のあとが
せめて せめて 百日 抱きしめたまま
忍び泣きする この恋に

お前の好きな 腕まくら
しびれた右手 そおっと外(はず)し
せめて せめて 百日 早くに逢えたら
ふたりぼっちの この恋に

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北放浪 – 北川裕二

沈む夕陽に 哭(な)く木枯らしはいつか吹雪に なっていた雪を着て 雪を着て果てない夢を 追い求めいまもお前は ひとりと聞いて小樽(おたる) 石狩(いしかり) 北

港哀歌 – 北川裕二

風が哭(な)く 恋に哭く雪が舞う 海沿いの町女ひとりの 舟唄哀しあなたいつまで 待たすのですか船が着くたび 桟橋で背伸びしている 私が見えますか夢が泣く 闇に泣

茅葺きの駅 – 北川裕二

会津鉄道 揺られて着いたここは湯野上(ゆのかみ) 茅葺きの駅湯の香にさそわれ たずねた宿はおくに訛(なま)りの おかみさん露天風呂へと 案内されて紅葉を眺めりゃ

女のみれん – 北川裕二

あなたのそばで 暮らせたら何もいらない 欲しくないどれだけ泣けば この思い遠いあなたに 届くのか酔って今夜も 女のみれん惚れた私を 惚れた私を 捨てないであなた

泣いて長崎 – 北川裕二

忘れないでと 叫んだ声も霧笛に消される 港町異人屋敷も オランダ坂もやさしい貴方の 想い出ばかりあゝ泣いて長崎涙色した 雨が降る噂ひろって 春雨通りそぞろに歩け

恋雨みれん – 北川裕二

命あずけた 恋でした惚れて尽くした はずでした傘もささずに 今日もまたあなた捜して ひとり泣くわかれ雨 なみだ雨 みれん雨お願い優しさ もう一度バカな女で いい

風花の宿 – 北川裕二

雪の降る町が 似合う女でいてくれと出発(たびだつ)そのとき 抱いたひと引きとめたのに 情(つれ)ないね恋はひと夜の 湯けむりですか雪にもなれない 性(さが)ゆえ

なみだ百年 – 北川裕二

あなた忘れて 生きるにはきっと百年 かかりますこの肌この手が まだ覚えてる優しいぬくもり あの笑顔つらいのよ…つらいのよ泣いて泣いて 泣いて泣いて なみだ百年 

鮪 – 北川裕二

津軽海峡 真冬の沖も漁師仲間にゃ 宝の海だ飛沫(しぶ)きかぶって 漁場へ進み競う船出は 度胸船きっと港の 秤にのせる男の夢追う まぐろの海だ波が逆巻(さかま)き

命まるごと – 北川裕二

肩の薄さよ うなじの細さ苦労ばかりで すまないね何もやれない 俺なのにあなたでなけりゃと すがりつく倖せが 倖せが きっとくる命まるごと 預けたい小雪舞い散る 

夢ふたり – 北川裕二

愛を重ねて 手を取りながら歩き続けた しぐれの道をでこぼこ 泥んこ 北の風長い日蔭も いつの日かふたりにだって 陽は射すものと空を見上げて ほほえむお前夢をつな

泣いて大阪 – 北川裕二

女泣かせの 通り雨やむ気なさそに 降り続く捨てる恋なら 夢ならばなんで優しく 抱いたのよ酔って大阪 泣いて大阪あなたが あなたが にくい女恋すりゃ 初心(うぶ)

ついておいでよ – 北川裕二

歌も歌えぬ お酒も呑(の)めぬつまらぬ男(おとこ)と 笑った女(ひと)が今は隣(となり)で 眠ってる枕はずして 寝返りうって指をからめて 夢の中ついておいでよ 

酔風ごころ – 北川裕二

あなたが悪い わけじゃない惚れた私が いけないの叶わぬ夢は みないからそばにいさせて 捨てないでごめんね ごめんね わがままばかりこころに夢風 なみだ風 酔風ご

ひとり北国 – 北川裕二

北の北の名もない 岬のはずれかもめも一羽で 鳴いている忘れられない 女をひとり噂をたよりに たずねて歩くお前のいそうな さびれた町はいまも雪の残る 冷たい北の町

おとこの船歌 – 北川裕二

男が船を 出航(だ)す時は海とがっぷり 四つに組む覚悟を胸に しまってる沖の漁場は おとこの土俵泣くも笑うも 笑うも泣くもエンヤラ ドッコイドッコイショ腕しだい

溺愛 – 北川裕二

何の約束も 口にしないであなたと暮らせたら それでいいのよ百年先でも あなたひとりを愛してゆくでしょうそれ程好きなの 倖せだから 大丈夫寄り添いながら 歩くから

潮来雨情 – 北川裕二

後を引くのは 判っていても想い出づくりの 二人旅これが最後の わがままならば舟に揺られて 橋めぐり…あやめ咲かせた 潮来の雨はなんで別れの 雨になるいっそ酔いた

男のまごころ – 北川裕二

つらい涙を 背中にかくし俺をささえてくれるやつおまえだけ おまえだけ この世にひとり体いたわれ むりするな言えばうなずく 笑顔がいとしいよたまに息抜き しなけり

伊豆しぐれ – 北川裕二

胸の中まで 瀬音を立てて泣いて流れる おんな川消えたあの人 追いかけてさがせば未練の 水しぶき天城(あまぎ) 湯ヶ島(ゆがしま)…肌に 肌に冷たい あぁ…伊豆し

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