久保田早紀
-
ピアニッシモで… – 久保田早紀
秋の稲妻はふいに寒い日を連れて来るから遠い国から来た私のことをそんなにやさしく抱きしめないで 窓には潮風 波が高くなる孤独な時を 今だけ暖めて束の間ゆらめく炎になるのはまだ早すぎるわ 白い部屋で ピアニッシモ ピアニッシモ何もかも知りすぎなくて いいのに 秋の夕暮れはふいに哀しみを連れてくるから今は遠い日の想い出あなたに話せはしないわ 傷つかないで 壁にはセザンヌ 枯葉色の森あなたのひざに 頬杖つ…
-
ネフェルティティ – 久保田早紀
夢がはがれて空に昇った夜はきっと新月に照らされる眠るあなたとわたし 見下ろしているenergy ふたつめの魂明日も暦に無い遠い未来もこの恋のすじ書きはもうすでに書かれているはるかな ネフェルティティ輝く ネフェルティティ 時のピラミッドからのぞいた過去の町も今日と変わりはしない恋に破れた者と微笑む者が移り変わってきただけあなたが 初めて愛した誰かと同じ道 私も通るようになっているはるかな ネフェル…
-
ソフィア発 – 久保田早紀
季節風を追いかけてみたいトランクひとつ持たずに西へ行く 月夜を滑るように走り続けて旅人の哀しみを乗せたバルカン窓に息を吹きかけて行き過ぎた男(ひと)の名前書けば愛の次はウソと言う名の駅で降ろされてばかりだから 飛び乗ったの女がたまには一人で旅に出てもいいじゃない国境線にけむる霧が流れ出して想い出を くもらせた 安いワインで夢を飲みほした晩は冷たいシートも羽のソファに変わる忘れてしまいたいのにひとり…
-
木々が大きかった頃に – 久保田早紀
Hello マリアンヌHello ジュリア遠すぎる都会から 車を飛ばして来たの舗道に置かれた テーブルが見える口々に語る夢金色 巻き毛を揺らしため息をついた 角の店ドアを押した教会のそばの もみの木もあの頃 もっと大きく見えた雨上がり 黒い犬ゆっくり通りを横切る口笛を吹けば 尾をふるよ小さな胸のメモリー 湯気の出た カフェオレにひとつの願いを かけたそれぞれの 夢を叶えてと十字 切る焦げ茶色をした…
-
らせん階段 – 久保田早紀
ただそれはこの街にも ありふれた愛の軌跡名前すら 知らない男と女が“二人”と呼ばれただけのことただ それは白昼夢に まどろんだおとぎ 噺夜が明けて 気づいてみたら白い空と いつもの朝だけが待っていたわ 猫のような 目をしている寂しさを吸って 輝く瞳には想い出が 渦を巻いて描く らせん階段 ひとときの 哀しみから甦える 私だものいくつもの 出逢いを めぐりめぐってはまた違う恋に 生きるでしょう こん…
-
お友達 – 久保田早紀
男と女と女三人寄れば また誰かが泣くことになると わかりきってた So気にしないで あの娘(こ)と 踊ってきて私も覚悟を キメルワあなた 最後のDANCEの後(あと)呼び止めた 私の名をOh, Never fall in loveあの日は もう来ないのOh, Never fall in love想い出の中にだけお・と・も・だ・ちでいましょその方が いい好きだから 嘘をついた ギリシャと名付けた丘で…
-
上海ノスタルジー – 久保田早紀
小雨をさけて 泊まる場末の安ホテルきしむBedのそばでゆれるランプの炎疲れた身体横たえて 静かに目をとじれば 雨の音に呼び戻された遠い昔が浮かんで消える今夜は想い出たずねて眠る夢で会えるわ あなたと上海ノスタルジー tonight 窓を少し開いて夜風に身をまかす遠くのほのかにかすむ港の町あかりにかさなる記憶薄らいで はかなく来ないあなた 待ち続けて夢みた日々も霧苗とともに何処かに消えた今夜は想い出…
-
天界 – 久保田早紀
この世の全てのものはひとつの周期を持ち宇宙のおきてに従い月も星もまわる生まれた時からすでに今日の日は定められあなたに出逢うために私の道が敷かれていたの運命とは星のめぐり名も知らぬ同志が引き合い引き寄せられてゆくエムルーズ ファルダー エムルーズ ファルダー 火を吹いて墜(お)ちてゆく隕石のような恋は悲しい性(さが)に縛られて人を変えてしまう男と女を越えて愛せる人はひとりあなたはひとりしかいないのよ…
-
帰郷 – 久保田早紀
この坂を登りつめるとふるさとの街が見える幼ない日の 壊れやすい記憶を指先で たどってみる灯りの花が咲き夜のとばりに 浮かぶ窓食器のふれる音 夕餉(ゆうげ)の祈りそこには悲しみさえわかち合える人がいる……愛の器にこの坂を登りつめるとふるさとの街が見える 色あせた時計台の針は遠い日を回りつづける年老いた鐘の音は 静かにうなづき 語りかけるよ“あれから どこへ行きどんな世界を見て来たの大人の目をして 帰…
-
真夜中の散歩 – 久保田早紀
紫の霧の中 けだるげに街は眠るしめった髪の毛の 重さが哀しいあてもなく どこかへ行きたいのヒール鳴らしてひとはみな 気ままな女とうらやむけれど帰り道をなくした 子猫とおなじよあの人の部屋にはもう見知らぬ 誰かがいるどうぞ私に かまわないでただ真夜中の散歩と しゃれてるだけ 泣きながらこの道を 裸足で駆けた日もある背中に追いついた やさしい足音抱きとめた両手のぬくもりも思い出せる歩いても歩いても あ…