中江有里

  • 雨上がりのネコ – 中江有里

    冷たい雨だったもの私を抱いて帰ればよかったのに遠くへ逃げちゃいたい滴も拭かず歩いた長い夜 見えないものばかり追いかけて少し 疲れたな 疲れたな ベランダの濡れたシャツ心も渇かない強がりも限界ね寂しくなっちゃったあゝ泣こうかな 知らない道だってある迂闊に選ぶ答えが違っただけあなたを好きだったこと安心してね 誰にも言ってない 甘えていい時がいつまでも私 わからない わからない ベランダの流れ星涙によく…

  • 月下の代償 – 中江有里

    約束はしません 癖になるからくちづけもしません 深くなるならほんの僅かな愛しさだけ心に置いていきます なにも訊きません 嘘をつくからさよなら言いません 夢で逢うなら少しさみしい幸せでもあなたは承知しますか これでいいとはしないくせにどうするのかと問うてくるそれもこれも恋だなんてきっとみんな月のせいにする 涙はありません 傷になるから道など決めません また迷うなら誰も知らない言の葉は吐息が距離を謀る…

  • 砂に咲く薔薇 – 中江有里

    風に舞う白い砂荷車が花を摘む誰ひとり知る人がいないこの街 さみしさ繕うまま呪文のように泣いたゆびきり解く指はなにをあきらめたの 思い出に気を取られひと駅を乗り過ごす人は思い違いで行き先 変わるけど過ぎてくものならかまいはしないで そこは草原の果て太陽が朽ちてゆくありもしないことだけまるでほんとのよう 幸せを数えれば片手でも事足りるなのに涙だけはどうにもきりがない 哀しみも まやかしと慰めて 空を見…

  • マランタンデュ – 中江有里

    さっき言った あのこときっとちょっと 嘘だったほんとなんて ないのになんでこんな 気持ち いつか 覚めるくせに愛と呼ぶの 悲しくなるくらいならひとりでいい心が深くなるほどみんな誤解 そっと切った あの電話ずっとそうね 辛かったどんなふうに 言えたらこんな迷路 終わる 信じたい 言葉はなぜ聞こえないの さみしくなるくらいならふたりじゃない涙はなにも知らないみんな誤解 悲しくなるくらいならひとりでいい…

  • Yellow Lily – 中江有里

    無理を言えば 聞いてくれるたぶんそこに 甘えていた笑いながら嘘もつけるそんなところ気づいてない ふれていても手にはできないものがある あゝ幸せは怖いさみしさより怖い咲いた花ほど見とれてしまう抱きしめていてもじきに枯れるのに 肌を合わせ 眠る夜も時はどうせ こぼれていく夢はずるい 覚めるまでは夢だなんて 思わせない 好きでいても距離はどこかで見誤る あゝ隠してる涙さわらない言葉心が心を遠ざけてゆく抱…

  • まわり道 – 中江有里

    歩いてみなければそれでいいかわからないたぶんまちがうことも少なくないのです 見えないものばかり人は絶えず追いかけるなにを手にしてもすぐ足りない気がして ここにいることもただ不思議なこと まだ遠い また違うそんなくりかえしでもいつも思いますまわり道が 一番近い 失くしてみたときにそれがなにかわかるもの答え合わせのたびに悔やんでばかりです はじめは晴れててもいつのまにか雨の音だけど気づけば虹はそこから…

  • このまま – 中江有里

    うまく言えない気持ちがあふれる誰にも見せない涙もこぼれる そう ひとりでいると自分のすべてがどこかに消えてしまいそうで このまま このままこの手を 離さないでこのまま この手をずっと 声にならない言葉が聴こえる答えを知らない時間が流れる もう ひとりじゃないと心が知るほど 心はいつも迷いそうで このまま このままこの手を 離さないでこのまま このままこの手を なにがあってもこのまま この手をずっと…

  • 針と糸 – 中江有里

    柔らかい布に 糸を通す形も決めぬまま 幸せはそんなものほころびもすれば 針も使ういつからその先を 怖れてる 刺されば痛い 涙も痛い止まらない血も 知っている 型紙のない服をさみしさが着せたがるつまらない嘘までつく私を放し飼いにして よそ行きに選ぶ 色はいつもあなたと歩くのに 相応しい花の色まちがいで戻る 道の距離が次第に長くなる 曲がり角 心が嫌い 言葉も嫌い瘡蓋はすぐ 乾かない 着せ替えもない服…

  • 大切なこと – 中江有里

    誰かを好きになったら青空を見なさいあふれだす その涙それは正しい 逢いたい人がいるならいますぐ行きなさい心には それ以上できることはない なにもなくても少しずつ歩こうか いつもどこかに幸せは隠れてる君が気づけばそれは答えになる 悲しいことがあったら星空を見ましょう思い出は 誰ひとり決して 見捨てない さみしい人に逢ったら抱きしめてあげましょうぬくもりはその先の道になるはず どんなときでも時だけは流…

  • 過失 – 中江有里

    背表紙を 見ただけで読まなくても わかる捲るほど 辻褄が合わない恋でした ありふれた倖せに近づいてもなぜか突然のつむじ風ページを折りました 口にすればきっと あなたを困らせるこの苦しみは よくある過失夢を見ればきっと 夜明けは寒すぎるまださみしさに 慣れてはいない 渡るには遅すぎる点滅だと気づき追いかけるその前に心を止めました 欲張りな唇を悟すより今夜好きなだけ頬伝う涙に決めました 優しさにもきっ…

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