中村晃子

薔薇の囁き – 中村晃子

甘いくちづけにむせて
眼がしらを濡らす
泪あたたかい
さめた珈琲がふたつ
テーブルの上で
時間止(と)めている
もしかしたらこれで私は
死ぬかしら
恐いような愛の倖せ
多すぎて
あなたの腕に抱かれていると
子供にかえるわ

息が耳もとにかかり
少しずつ胸の
隙間埋めてゆく
薔薇の花びらがひとつ
足元に落ちて
模様書いている
たとえここで何がふたりに
起ろうと
耐えてみせる愛の重みに
ささえられ
あなたの膝にもたれていると
子供にかえるわ

もしかしたらこれで私は
死ぬかしら
恐いような愛の倖せ
多すぎて
あなたの腕に抱かれていると
子供にかえるわ

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