上村ひなの(日向坂46)

一番好きだとみんなに言っていた小説のタイトルを思い出せない – 上村ひなの(日向坂46)

一番好きだとみんなに言っていた
小説のタイトルを
全然 思い出せないのは
ホントはそんな好きじゃないんだ

好きじゃないんだ

僕がなりたい僕を 追いかけても
腕をするりとすり抜けて
どこか知らない場所へ消えてく

理想なんて
非現実的な
夢物語じゃないか
ただの口当たりのいい
諦めさせないための人参だろ?
遺伝子組み換えされた
そんな欲望の出口
忘却しかないんだ

知らぬ間(あいだ)に
あきらめることだけが
上手になって来た気がする
大人になるっていうのは
そういうことだってわかった
覚えなくていいことばかり
頭に満タンなんだ

一番好きだと自分で思ってた
小説のタイトルが
なかなか 出て来なかったのは
たぶん そんな好きじゃないだけ

人間(ひと)はなりたい自分になれないから
思い悩んで苛立って
妥協しながら見栄を張るんだ

“本当”なんて
自己申告には
説得力がないね
他人から見える僕が
どう思われたいかの口実さ
印象操作するように
知的でスタイリッシュな
イメージが欲しいんだ

そんな軽薄な
本音を軽蔑してる
自分に気づかないふりして
相変わらず僕は ずっと
昔からの嘘を通してる
もう辻褄 合わなくなって
なんだか逃げ出したい

一番好きだとみんなに言っていた
小説のストーリーに
自信がなくなって来たのは
最後までは読んでないのかな

「表紙のデザインもそこに書いてある字体も覚えているのに、
小説のタイトルが思い出せない。
どうしても気持ち悪くて
実家の僕の部屋の本棚も机の上も押入れも探したのに、
そんな小説はどこにもなかった」

それは初めから
あったのかな
想像の中の
記憶じゃないか
どこかで勝手に
作り上げて
大事にして来た
理想の僕だ

一番好きだと自分で思ってた
小説のタイトルが
なかなか 出て来なかったのは
たぶん そんな好きじゃないだけ

一番好きだと言ってた小説を
忘れるわけがないだろう
元々 存在しなかった
誰も知らない何か欲しくて 僕は…

好きじゃないのか
好きじゃないのか
好きじゃないのか
好きじゃないんだ

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