三島みどり

いろはにほへど – 三島みどり

意地が言わせた さよならに
寒い未練の風がふく
痩せて悲しい泣きほたる
どこへ、飛んで流れてゆくのやら…
愛をこわした女のかくれ火が
燃えて燃え尽き くすぶり消えるまで
身勝手を通した私
“いろはにほへど、散りぬる夢よ”
醒めて 失くした人のぬくもりに
夜毎ふける泣き虫よ

呼んでみたって遅いけど
せめておそばに行けるなら
夏のほたるに身を変えて
そっと、胸に床しくとまります…
勘にさわって叱られない様に
羽根をひそめてかすかに灯します
ともす灯に気づいて欲しい
“いろはにほへど、散りぬる夢よ”
過ぎて 心変わったこの私
あなた、一目見てほしい

“いろはにほへど、散りぬる夢よ”
泣いて 細くやつれたぬけがらを
あなた、抱いてくれますか

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