三上寛

このレコードを私に下さい – 三上寛

燃えてる街をくぐりぬけて
正月の八百屋から盗んできた
血まみれのリンゴを一つ
私に下さい
そのしぼんだ種を
宿せるかもしれないから
そのしぼんだ種を
かじりとれるかもしれないから

愛と希望にむせび泣きながら
正月の区役所から盗んできた
住民票の切れはしを私に下さい
その印刷された紙の中で
人間でいれるかもしれない
その印刷された紙の中で
日本人でいれるかもしれない

恋に破れた牛を食うために
正月の肉屋から盗んできた
生臭い庖丁を私に下さい
それでキレイにアソコを剃れば
新しい私になれるかもしれない
それでキレイにアソコを剃れば
新しい彼にあえるかもしれない

天使の誘惑にさそわれて
正月の紀伊国屋書店から盗んできた
鉄より重い本を一冊私に下さい
その読めない字で何か
思い出せるかもしれないから
その読めない字で何か
喋れるかもしれないから

いつものように思い立って
正月の産婦人科から盗んできた
産まれたばかりの赤ン坊を私に下さい
その小さな固まりを抱いて
歩けるかもしれないから
その小さな固まりを抱いて
眠れるかもしれないから

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最後の最後の最後のサンバ – 三上寛

最後の最後の最後まで乾かないで乾かないで欲しいものは女子大生の洗濯物と心最後の最後の最後まで切れないで切れないで欲しいものはパンツのヒモとあの娘との絆最後の最後

赤い馬 – 三上寛

ここがいつから海だったかは知らない赤い馬が泳いでいる足もとの雲は鳥になり飛び色は消えて形だけが落ちて行く腕が伸びる地平線を掴んでいるのは私だ体は遠くで浮かんでい

なんてひどい唄なんだ – 三上寛

風はデタラメに吹いていた乾いたサルマタが青空にはためいてカツ丼はさらにさらに重く運ばれてきたああ ああ ああなんてみっともないなんて訳のわからない夕暮れなんだあ

密漁の夜 – 三上寛

君は窓の中いつのまにかコックリ コックリ眠ってしまったみたいぼくは窓の外降りしきる雪の中ひとりかけようとズボンをぬいているここ吹き嵐れるオホーツクの海を前にして

BANG! – 三上寛

右手に挙銃左手にギター負けたとみせかけてから逃げ逃げてからふり返って後ろから バーン恐ろしさのあまりにたれ流す犬のようにはいずりまわって バーンごまかし笑いで 

華麗なる絶望 – 三上寛

ある日の街角にはどんな意味もないある日の午後にはどんな理由もない吸いかけのタバコもほっておけば消えるようにそいつは始めから決っていた事なのサお前は今腐りかけてい

逢えてよかった – 三上寛

久しぶりに聞えるなつかしいあの歌が君とはなれ一年余り遠くへ行ったものさ帰ってきたよ聞えるなつかしいあの歌がなけてくるよ飲み明そう朝がくるまでいつも いつもこれで

せりふ – 三上寛

別れたんだってな聞いたよきのう久しぶりに鳥和へ行ったらオバさんが言ってたよ子供は向こうが引き取るって話じゃないかもう歩ける様になったんじゃねェのか大変だなあこれ

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