ケント(石田彰)

夢見る君へ – ケント(石田彰)

夕暮れ時、作業を終わらせて顔を上げると
隣の椅子で眠る君の姿が目に入った
机には、私のパズルを解いていた痕跡
よほど待ちくたびれてしまったのだろうか

あの日、君の心を完全に把握することはできないと知った
現存するどんな問題よりも難しいと
そもそも私自身の心すら測れきれていないのだから

すぐに起こしてしまうのも勿体ない気がして
私は自分のコートを君の肩にかける
そのとき指が、ほんの少しだけ君の身体に触れた

小さい背中、細い肩、柔らかい髪……
私は君を、心の底から守りたいと思っている
無防備な寝顔だ
君は今どんな夢を見ているのだろうか

願わくば、そこに私が登場していたらと思ったのだが
それも何だか気恥ずかしい
夢の中の私が君に何をするかまでは計算できないのだから

そうだな、
こうして見守っている程度で、勘弁してもらおう
君が夢から覚めても、笑みを絶やさないように
この幸せが、ずっと続くように……

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