ぼくのりりっくのぼうよみ

曙光 – ぼくのりりっくのぼうよみ

明け方 冷たい空
潮がかすか 香る暗がり
平然と ある街並み
誰のためでもなくそこに

時間が止まったみたい
自分だけに開く空間に
寂しさを転がしながら
世界を味わった

凍っていた秒針が
人肌で溶かされた
また社会が動き出した

夢が醒める前で
座り込んで見ない振り

硬質な世界 以外に居場所を見い出せない
加速する気配にこの手は伸ばせない
感情の陸にあがることは出来ない
怒りも喜びもあまりに鮮やかで
足りないものばかりで 僕には
下らない悩みがこの脳を支配する

永遠のプールに潜り続ける僕は
僅かな酸素をもう使い果たした
曙光ではじめて息をする

機械仕掛けの壮大な舞台装置に
組み込まれた 祈りの雨は
もう降らない 覚束ない足取りで
一人で 家に戻る
この狭い部屋が 唯一の逃げ場
在ることを許される 錆びたアクアリウム
息を殺しながら 自由の輪郭すらも忘れながら
今日も生きる

永遠のプールに潜り続ける僕は
僅かな酸素をもう使い果たした
虚無に飲まれて 死んでいく

誰の目にも触れずに
息を吸いこむ上手に
寝ぼけ眼の太陽の手をとろう
曙光の三十分だけが
開かれた世界
誰にも 裏切られない

プールに沈んで
ゆらゆらと揺れる水面
じっと見つめて

僅かな酸素を
指の合間に求めて
裏切られる

永遠のプールに潜り続ける僕は
僅かな酸素をもう使い果たした
曙光ではじめて息をする

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