すぎもとまさと

  • 昭和最後の秋のこと – すぎもとまさと

    貧しさもつらくない 四畳半にも夢がある嘘をつかない約束で 肌を寄せあう二人なら 死にましょうか 生きましょうか生きましょう 生きましょう互いに巡り会えただけ この世の神に感謝して 昭和最後の秋のこと 雨にうたれる彼岸花震える愛が 震える愛がまだあった 飢えた日を忘れない 痩せて目だけをひからせたそんな時代の子であれば 心だけでも満たしたい 死にましょうか 生きましょうか生きましょう 生きましょう笑…

  • 街の灯り – すぎもとまさと

    そばに誰かいないと沈みそうなこの胸まるで潮がひいたあとの暗い海のようにふれる肩のぬくもり感じながら話をもっともっと出来るならば今はそれでいいさ息でくもる窓に書いた君の名前指でたどりあとの言葉迷いながらそっといった街の灯りちらちら あれは何をささやく愛が一つめばえそうな胸がはずむ時よ 好きな唄を耳のそばで君のために低く歌いあまい涙さそいながらそして待った街の灯りちらちら あれは何をささやく愛が一つめ…

  • 薄荷抄 – すぎもとまさと

    何年も会わないで突然舞い込む悲しい知らせそういえば離婚して 実家にいたんだねあくせくとたえまなく仕事に追われて生きてる俺さ両親も亡くなれば 故郷が遠すぎて道端の花を愛した おまえがなぜこうもあっさり 遠くの空に先回り これってないぜバッキャロー バッキャロー初恋匂う 薄荷が匂うバッキャロー バッキャロー切ない夜よ 出張でたまに来る同級生から聞いてはいたさ家と家 板挟み 妻として耐えた日をお前こそ連…

  • 御堂筋線で… – すぎもとまさと

    御堂筋線でミナミヘ向かえば ひとりさみしい女が 車窓(ガラス)に映る心斎橋でドアがひらくと 今日もあんたをさがして ふり返るかんにんしてや かんにんしてや死ぬほど好きやのにかんにんしてや かんにんしてやためらった あたし追いかけて 行きたかった…だけど この街 捨てられへん 銀杏並木は淀屋橋まで 染まりよりそい歩いた 想い出散らす東京へ帰るついておいでと 云ったあんたの笑顔が 哀しかったかんにんし…

  • 最後の桜 – すぎもとまさと

    桜を見るのは 今年が最後ジョークにならん 病室の窓恋人よ 恋人よ 恋人よ馬鹿な男と 笑ってくれるか愛してるとも 言えないままでもうじきあの世へ おさらばするけどお前にはまだ 人生があるきれいなままでいろよ きれいなままで 本当は根っから 泣き虫なのに泣かなくなった 告知の日から恋人よ 恋人よ 恋人よどこで涙を 流しているの愛してるって 言わないからねさよなら言うより 哀しくなるからお前と仰ぐ 最後…

  • エデンの雨 – すぎもとまさと

    こんな 夜がいつかは来るとあの日 知っていたならば私 男(ひと)に絶望したり心に鍵 掛けたりなど しなかった…あなたの胸は エデンの園ね無傷なイヴに 帰っていく予報外れて レイン・レイン・レイン 窓に雨いいわ レイン・レイン・レイン わらいなさい昨日捨て身の レイン・レイン・レイン 女でも今は 愛に 生きて いたいのこれが 仮にひと時だけの夢に 過ぎはしなくても私 決して後悔しないあなたという 命…

  • カトレア – すぎもとまさと

    そして今年も並んだ街のフラワー・ショップにピンクのカトレア やっと忘れかけたのに…安いアパートの部屋にまさか場違いと知らず照れた顔で 暮らす男(ひと)がくれた花なの女として訊きたいこと訊けないまま流されてとめ処もなく 愛していた19、ハタチ辺りカトレア カトレア 帰れない昔 タバコばかりを咥えて何も言わない男(ひと)なの無口と無口に 言葉なんて邪魔だった…いいえこの胸の棘は 今にみな抜いて見せる抱…

  • OSAKA – すぎもとまさと

    大阪生まれが あんたの誇りやったのに大阪の街を今 なんで出てくねん最終電車のベルが 鳴り響くホーム缶コーヒー あんたの胸に投げてた夢しかないアホな男やけどあたしは 本気で 惚れてた心斎橋から今夜 愛が逃げてゆくそんな顔で さよならは 似合わへんから心斎橋から今夜 愛が逃げてゆく泣きだしたら負けやから 瞳閉じてた 「お前が好きや」と あの日 あどけない顔で道頓堀 裸足で 飛び込んでいた阪神負けた日 …

  • 横濱のもへじ – すぎもとまさと

    横濱(ハマ)のもへじがこの店に最後に来たのは 去年の秋さ秋風吹くのに ペラペラアロハヤシの木三本 真っ赤なアロハニカッと笑えば 前歯が二本誰が呼んだか へのへのもへじクチは悪いが やさしい奴さ 故郷(くに)は 会津の若松でヨコハマ運河で ハシケの暮らし誰かれかまわず ぶっきら棒に元気を出しなと 背中を叩く焼酎三杯 ご機嫌もへじゲジゲジ眉毛を ピクピクさせて得体(えたい)しれない BIGな奴さ もへ…

  • 夕暮れ文庫 – すぎもとまさと

    あの子のことは もういいよどうか倖せ 見つけてね彼岸参りの 帰り道どしゃぶりのバス停でつぶやいた お義母さん あなたを愛した 女が二人あなたを失くした 悲しみを競い合いながらただささやかに 生きると決めた夕暮れの ものがたり わたしの知らぬ あの人の子どもの頃を ぽつぽつとやんちゃなくせに やさしくてそのままに育ったと微笑んだ お義母さん あなたを愛した 女が二人あなたを失くした 悲しみを競い合い…

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