さだまさし

ひとりぽっちのダービー – さだまさし

子供たちを背中に乗っけてゆっくりと
砂丘を歩くだけの馬がいる
春も夏も秋も冬も
実は彼は昔 レースで走っていた
一度も勝ったことはないけれど
ターフに吹く風を知ってる
幼い頃にはみんなに 期待されて育った
もしかしたらと彼自身も 少しは思っただろうか
あのダービー 夢のダービー 東京の芝の上を
大歓声の中 ゴールを駆け抜けてく風になる
あのダービー 夢のダービー もしも怪我さえなければ
彼にもチャンスはあっただろうか
誰にも小さな伝説があるように
彼にもある小さな伝説を
他人(ひと)ごとだと思えないんだ

松林を抜けて しばらく歩いたなら
砂丘の向こう側に海が見える
春も夏も秋も冬も
彼はそこでひととき遠くをながめたら
今来た道を戻ってゆく
いつもおだやかな眼をして
生き方には色々ある 他人(ひと)の幸(しあわせ)は計れない
彼の背中で輝いてる 子供の目を見るがいい

あのダービー 夢のダービー 彼は今も走ってる
人々の思い出の中に 彼のゴールがある
ひとりぽっちのダービー 誰も知らないレースを
彼なりに戦ってる
あのダービー 夢のダービー 第4コーナーから
沸き返るメインスタンドを彼だけが駆け抜ける
ひとりぽっちのダービー あの海の潮騒が
彼への大歓声に変わってゆく

子供たちを背中に乗っけてゆっくりと
小さな伝説が歩いてゆく
春も夏も秋も冬も
春も夏も秋も冬も

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