おいしくるメロンパン

  • 命日 – おいしくるメロンパン

    手垢にまみれた街を今洗い流していったんだねえ僕も慰めて 死んだ友達の命日も思い出せなくなっていた蛇口から水を飲んでも せめてこの風邪が治らないうちはそばにいて朝も沈むくらい降り注いでいて何も聞かないで 毛布の温度と溶け合って境い目すら失ってしまえたらいいのに せめてこの熱が下がらないうちはそばにいて夜の凍るくらい降り積もっていて何も言わないで 窓は開けておくよ せめてこの瞼弛まないうちはそばにいて…

  • 5月の呪い – おいしくるメロンパン

    くもり空 抱えていた不安と期待いつだって終わることないまま失くしてきた そうやって簡単に奪っていく5月の呪いは解けないでゆっくりとゆっくりと沈んでいく 忘れないよ 嗚呼そよ風に溶けて消えてしまうくらい淡い想いで満たされていたのずっと灰色の今日から歩き出せないような気分 億劫でしかたないんだなにをするにも なにもしないことも 春が終わってしまったら暑い日が続くでしょう誰か救ってくれるかな埃かぶったベ…

  • look at the sea – おいしくるメロンパン

    あなたの涙を飲んであなたの吐息を吸ってあなたの言葉を噛んでいたい 綺麗な髪を数えて歪な痣をなぞって静かな瞳に棲んでいたい look at the sealook at the flowerlook at the bird醒めないでいてね look at the sealook at the skylook at the moon醒めないでいてね あなたの憂いに酔ってあなたの重さも愛しあなたの嘘なら…

  • dry flower – おいしくるメロンパン

    充分寝たもうサイレンが空っぽな五時を迎えに来た僕を溶かしたバター塗りたくったこの部屋戦争映画鳴らす隣人目眩を打った銃声煮える残暑の刹那世界の終わりみたいな赤 寂しくなったらきっとそれすらはしたないあなたを待ってもずっと遠い日の花火なのでしょう 染まり続ける翠の扇動に疲れ果ててもまだあなたの横顔は美しい この想いはまるで散らずに枯れた紫陽花のようだ死期を待つ約束だけが僕を歩かせる 次の季節へ 戦争映…

  • 泡と魔女 – おいしくるメロンパン

    滲む 浸食を許して鮮血を飲み込んだ街腐りかけた檸檬を煮込んでキャラメルを一つ また一つ溶いた アネモネを散らして レイニー レイニー待ち惚け ゲキヤクに縋ってメイビー メイビー水泡に帰すその前にシェリー シェリーあなたは少女のままでいてもう 手遅れみたいさ 今は 夜を飼いならした瞳にあの日の写真だけを映して焦げた鍋の底に固まったキャラメルを洗い流すこともなく レイニー レイニー置き去りにされても繕…

  • 水葬 – おいしくるメロンパン

    「生まれ変われるなら鯨がいいな」いつも窓をみつめる君の言葉二重瞼が鈍く閉じた朝に知ったよ世界はどこまでも薄情なんだね 沈黙する大気の底君を攫って歩くプールサイド月夜の水葬 宇宙を口に含んだら魔法のかかる季節だねもう一つ目の栓は抜いたよ終わらない夏にただ渦を巻いた まるで古びた映画みたいな景色だ僅かでも確かに水位は下がっていく君が壊れ始めるまでの日々も音を立てながら流れてしまうみたいで 丑三つ時 夜…

  • 桜の木の下には – おいしくるメロンパン

    昔あなたが教えてくれた奇妙な話、思い出すあの日 迷信伝説戯言に噂も引き連れてバスから降りたらあなたと駆け出した 菜の花石南花蒲公英鈴蘭涼しげに足を踏み入れたあなたが消えた 瞬間最大風速で吹いた風あなたの嘘が本当になってしまったよあの木の下で眠ってるあなたが今年も春を染めていく いつか誰かが残した言葉奇妙な話、思い出すあの日 街談巷説流言飛語まで巻きこんで耳鳴りでその声が聞こえない 綿雲鶯木漏れ日春…

  • 色水 – おいしくるメロンパン

    色水になってく甘い甘いそれは君と僕の手の温度で思い出を彩ってく寂しくはないけどちょっと切なくて流し込んだ空の味 くるくると回る風車を君は弄んで下駄のかかと鳴らしながら「またね」って笑ったんだ 夏の終わりは通り雨の香り「喉が渇いたよ」 色水になってく甘い甘いそれは君と僕の手の温度で思い出を彩ってく寂しくはないけどちょっと切なくて流し込んだ空の味 生ぬるい風が吹いて夏は僕を笑った茜色に溶け出した空は僕…

  • あの秋とスクールデイズ – おいしくるメロンパン

    細く伸びてやがては群像の隅で花弁を開くありもしないその話どうしても笑えないんです 喉の奥を今もつかえて出てこない言葉誰も僕を知らぬふり泣いてみても後の祭り 嗚呼 情けないな 情けないな あの日裏切ったのは僕の方だった鈍痛がまだ心臓の中心でのさばってんの 部活帰り カーディガンの袖教室の窓 影二つ最後のチャイム 自販機前たむろ肌寒い秋の夕暮れ 部活帰り カーディガンの袖教室の窓 影二つ静かな空 冷た…

  • 紫陽花 – おいしくるメロンパン

    悲しくなるくらい一面の青と眠たくなるような夏の匂いに 溺れないように息を吸って嫌になる前に捨ててしまおうか炭酸も抜けきったし 枯れて爛れて茹だる前に全て忘れてしまいたい紫の花乾いたアスファルトに影を落とす 低く唸った空の歌 強い風気の遠くなるような思い出ばかり 暮れて忘れ去ったあなたの横顔に呪われてどうかもう泣かないで夏はすぐそこさ歩いて行け 雑踏の中揺らめいた春の暮れ夏の訪れ境界線は蜃気楼青く滲…

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