うみのて

言葉狩りの詩 – うみのて

台所では
はらわたを出された魚が跳ねるのを笑ったという

食卓では
まだ動くその肉を笑ったという

ナチの収容所では
足を切った人間が
切られた人間を笑ったという
切った足に竹を突き刺し歩かせて
ころんだら笑ったという

ある療養所では
義眼を入れ
かつらをかむり
義足をはいて
やっと人の形にもどる
欠落の悲哀を笑ったという
笑われた悲哀を
世間はまた笑ったという

笑うことに
苦痛も感ぜず
嘔吐ももよおさず
焚き火をしながら
ごく自然に笑ったという

夜の塀のむこうでは
びっこの月を笑うという
可能性の裏には
方輪の海が広がるという

やましさの欠片もなく
誰かの悲しみを歌にしよう
その歌は売れるだろう
あなたの悲しみは売れるだろう

血も汗も流さずに
くたびれ儲けの銭が欲しい
そんな歌が歌いたい
そんな夢を叶えたい

ああ君に幸せあれ
健やかなる時も
病める時も
いついつまでも笑顔でいておくれ
もっとずっと
汚れてくれ

汚してくれ

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