セザンヌの絵 – 高見知佳

あなたと行った展覧会で
はじめて見た セザンヌの絵の数々
その淡い彩りの中に あなたの
やさしさを見つけた
あなたが偉い画家になる日を
夢見ていた あの頃の私たちは
貧しくも あたたかく生きて
素敵な恋人と言われた

いつもいつも
二人は窓に腰をおろして
あそこが アパルトマンの丘だよって
あなたはパリに憧れて

雨が降ると似顔絵描きの
アルバイトもできなくて 一日中
淋しさに抱きあって泣いた あの頃
アトリエの片隅
一人になれば 何でもできる
そうつぶやき 出ていった九月の朝
セザンヌの絵の前で二人
心をよせあっていたのに

いつもいつも
二人は窓に腰をおろして
あそこが アパルトマンの丘だよって
あなたはパリに憧れて

いつもいつも
二人は窓に腰をおろして
あそこが アパルトマンの丘だよって
あなたはパリに憧れて