暗闇の路地を7つ折れて自分が今どこにいるのかもわからなくなった きみの前に不意に現れた 古い道具屋欠けた壺や 変な彫刻瓶の中の蛇 歯抜けのタイプライター耳をすませば かすかな音が廊下のつきあたり 床の暗がり僕はここにいる 箱の中に遠い昔から きみを待ってた何百何千万回も 電話をかけた何百何千万回の 間違い電話やめてください 間違いですあなたは誰? 間違いです僕はきみを 呼び続けたいつも答は 間違い
風から生まれた 双子の鳥がいた生まれた時から 一緒に生きていた赤い実 青い実 ふたりで分けあって同じとき笑って 同じとき泣いたよやがておとなになり ふたりは別々に小高い山の上へ 深い森の奥へそれでも心は いつもつながってた同じとき眠って 同じとき目覚めた空へと帰る日が ひとりにおとずれた姿が見えない 呼んでも声はないこんなこと 今まで 思いもしなかったひとりはうずくまる 夜は暗く長く風から生まれた
ちいさな若葉がのびるよにりょうの手 空にさしあげて大地のかおり すいこめばわたしが緑にそまってくわたしの中からあふれだす春のさけびは いのちのさけびこずえをわたる風のよに春のさけびよ かなたへとどけこずえをわたる風のよに春のさけびよ かなたへとどけ
憧れる遠い南 揺れ揺れる海の上まどろむ鯨 黒光りため息は水の香り不思議な水のしぶきそれは信じられないほど細かいそれは粒子よりもっと細かい とても細かい顔に 髪に 吹きつければ僕も 砕けて霧に僕は海 僕は潮僕の中で大きく 寄せては返す波の音憧れる遠い南 揺れ揺れる海の上まどろむ鯨 息を吐くその息を吸い込む時 初めて知る世界を つないでほどくそしてまたつないで またほどくそのくり返し 永遠の香りの波
お鍋はグラグラ お釜はシュウシュウまな板はトントトンお豆腐フルフル 卵はプルプル納豆はネバネバ焼けたフライパンに卵をおとしてお鍋に味噌をといてあつあつご飯はおひつにうつして支度は上々みんなを起こして みんながそろったらさぁ沢山めしあがれお日様も輝いてるみんなで朝ごはん わたしが作ったいそいで いそいででも味わって食べてね魚はジュウジュウ 脂もジュワジュワ素手で触ってアッチチ耳たぶつまんで お水で冷
名前はネムルル いつも眠たい子猫そばにいるだけで みんな眠たくなるよおやすみ ネムルル きもちよく丸まっておやすみ ネムルル 夢の毛布にくるまって名前はネムルル 目には見えない子猫目には見えないけど 眠くなるからわかるおやすみ ネムルル 夢の橋を渡ろうねおやすみ ネムルル お月さまをかじろうねparaririran panpon tufanparaririran tufanparaririran ponpin
よくお休みのところ ちょっと失礼しますねいえ、そのまま 寝たまま どうぞそのままで今まで言えなかった ひみつの打ち明け話目を覚まさず寝たまま 聞いてくださいね実を言えばわたし ええ、あなたの妻ですがこれにはいろいろと 深いわけが 事情が何と言ったらいいのか…あの日 雨の夜に あなたに助けられたピヨヨ ピヨヨ そうですヒヨコのピヨです わたしお薬ぬってくださって お水飲ませてくださっておいしいトウモ
ニャンコ ニャンコ 花さかニャンコあの子が歩けば花がさくニャンコ ニャンコ 花さかニャンコ赤 白 黄色に 青 ピンク枯れ木に花を ピポパポパ屋根にも花を ピポパポパジャングルジムにも ピポパポパ ピポパポパ!ニャンコ ニャンコ 花さかニャンコケンカする人 花さかすニャンコ ニャンコ 花さかニャンコ泣いてる人も 花さかす頭に花を ピポパポパ指にも花を ピポパポパ鼻にも花を ピポパポパ ピポパポパ!ニ
わたしの知らない森の中で あなたは空を見上げてるわたしの知らない森の中で あなたは枯れ枝をふんで木の葉とおしゃべりしたり やさしく気ままな遊び涙を流す 淋しがり屋 たったひとり世界の中わたしの知らない小さな町に あなたの歌が今日もまた煙草のうすいけむりのように 季節の中にとけて行くあなたの 瞳はいつも 遠いふるさとを見ている世界が消えても あなたの森は いつまでも消えはしない都会の風に 吹かれて
しのつく雨 放課後の校庭できみとぼくは それぞれの傘をさしてたたずんでいたひと気のない 校庭は淋しくて話すことも みつからないままきみの呼吸だけを 感じてたきみと初めて ふたりだけで帰る放課後 カミサマがいるぼくは信じてはいないけれどきょうだけは 信じてもいいかなクラス一の人嫌いで通ってるぼくがなぜか おとなしいきみをいつも見ていたことを知ってるのは 教室の窓とドア声をかけて 声をききたくてだけど
オルゴールの箱の中に とじこめたまま大切にしてきた 思い出のかけらたち手紙の束 古い写真 夢色ビーズひびわれた貝殻 ガラスの仔馬まわれオルゴール まわせ 思い出をTIN TIRI TIM PAM TITITIRI TIM PAM思い出まわせ オルゴールオルゴールの箱をかかえ 街に出たのよ突然出会ったの いたずらなまなざしに吹き抜けた春風 そしてめまいのようによろめいて倒れた あなたの腕の中思わずオ
信じてる 信じてる 信じてるきみが言う そのたびにきみのからだの 深いところでガラスの砕ける音がする信じてる 信じてる 信じてる二年前 ぼくたちはそんな淋しい言葉があると知りもせず ただ愛していた窓を打つ 雨のしずくいつのまにか どしゃ降りの町きみの目が 雨を見ている帰りたいよと 空に話してるいつからか いつからか気づかずに ぼくたちは 住んでいたさかさまの国 言葉にすれば必ずそれは嘘に変わる信じ
おいしくおいしく たべようたべよう たべよう たべようげんきに げんきに たべようたべよう たべよう たべようたべるって たのしいねたべるって うれしいねむしゃむしゃ ぱくぱくいきているっていいねいっしょにいっしょに たべようたべよう たべよう たべようみんなでみんなで たべようたべよう たべよう たべようおいしくおいしく たべようたべよう たべよう たべようげんきに げんきに たべようたべよう
きみの中の商店街を きみがひとり歩いていたらきみの中の駅前の きみの中のキオスクのかげでとんでもない不吉なものが きみをじっとねらっていたそれは三日月 暗い目つきの月ほんとにいやな目つきのきみのあとをついてくる きみの中の路地から路地へとさてきみはついに袋小路 どこへももう逃げられないほら、いやな気分だね ほら、月が憑いてしまった暴れてももう遅いよ きみは今夜ヨコシマな月の女神になったヨコシマな月
月ねじれて夜ねじれ窓がねじれて指ねじれ螺旋階段あらわれ翼ねじれて飛んでいくねじれねじれてぐるぐると雲をからめて庭に小さな種を蒔き花が咲いたらすぐ逃げろ花咲けばねじれるあたまねじれて飛んでいく闇をひたひた黒アゲハ闇をひたひたjekh duj trin ガラス玉目の玉 全部でいくつ?jekh duj trin 歳の数死んだ子の数月ねじれて夜ねじれ窓がねじれて指ねじれ螺旋人形あらわれ代わりに消える 誰か
引き出しを一つ開けても ほら想い出駈けてくるあなたのシャツにつけたこれはあの残りの刺繍糸なつかしい映画の様に ほら想い出駈けてくる指からすべり落ちた写真はあの朝の海こうして部屋の片付けしても 終わりそうにないのあなたと過ごした幸せがわたしの指を止める逢いたい それさえもう夢 二つの想いが心を流れてるコーヒーの匂う街角 ほら想い出駈けてくる背中で今あなたが 淋しいかどうかきいたみたい振りむけばあの日
何気ない町の角を ふとまがったらそこはまるで 静かな夢けむるような 日ざしの中で突然 思い出してしまった朝のにおい 水の音突然 よみがえる あの頃の幸せな あの子とわたし思い出は眠っている 心の奥にだけどきょうは たずねて来た時の彼方 すずかけ通り三丁目の白い家突然 思い出してしまった雨のやさしさ 雲の色かすかな記憶のかたすみに風の中 あの子の瞳思い出は眠っている 心の奥にだけどきょうは たずねて
闇に走れば 暗い田んぼの水に 外燈の灯がうつるうつる水面に 息をひそめて心がとまる白いライトに 浮かぶ横顔口をむすんで 前を見てるからだを寄せて まぶた閉じればあしたも見えないこのままふたり このままずっと二度と帰らぬ 闇の中へ力をこめて 力をこめてアクセルを踏んで あなた車をとめて 寒い燈台まわるあかりを あきもせずにあなたのタバコが からになってもみつめていた次のことばが 言い出せなくて聞きた
初めて逢った時に ひと目で恋をした誰にも言わないで 逢いに来て 夜のブランコで待ってるやさしい人たちを 裏切り 嘘をついてぬけ出して 走って来たの 逢いに来て 夜のブランコで待ってるわたしは夜咲く ガラスの花よ あなたの手で こわしてかけらになって 粉になっても あなたが好きよ 好きよ指輪ははずして来て まぶしくて胸がいたいあなたの黒い指が からみつく 夜のブランコで待ってるあなたの机の上 ほほえ
ラ・ラ・ルウ ラ・ラ・ルウ つばさひろげて飛んで行きたい あなたのもとへラ・ラ・ルウ ラ・ラ・ルウ 時をこえてすべてをこえて あなたのもとへわたしが少し遅れたのは道端の花をつんでいたから花束かかえてドアをたたけばわたしより先に着いた人がいてあなたとその人笑っていた遅すぎたんだねと笑っていたラ・ラ・ルウ ラ・ラ・ルウ 花束投げる空には小鳥 わたしはひとりかすかにふれた指の先が熱くほってて眠れないこれ
暗い山の彼方から 流れてくるもの夢の水はさかのぼる 心の川をあなたに会いたい 会いたいわたしの声よ 虚空をつきぬけ消えずに とどいて とどいてあなたの 宇宙へ ひと雫激しい夢の濁流が へだてて 見えないだけど わたし ここにいる あなたもきっと星座のあいだで 青く光るのはきっと あなたのまばたきをそっと 手をのばすこんなにも 遠くはなれた わたしたち激しい夢の濁流が へだてて 見えないだけどわたし
遠い思い出の空にただよう光るゆりかご お昼寝の舟わたしはいない どこにもいないさがしに行こう はるかな国へ遠い思い出の 空にただよい何を見ている お昼寝の月太古の限り 植物の夢石に恋した かすかな記憶
山奥の 小さな駅に とまったら青い空気を ごらんなさい青い空気は 骨が好きあなたの骨を 食べてしまいます青い空気は 骨が好きあなたの命を 食べてしまいます山奥の 小さな駅に とまったら暗い緑を ごらんなさい暗い緑は 骨が好きあなたの骨を なめてとかします暗い緑は 骨が好きあなたの命を なめてとかします(すてきな ごちそう)忘れている 幼い頃 神社の森の暗がりで約束したことはないか?思い出せないこと
そっくりだけど ちがう そっくりだけど ちょっとねどこがどこがちがうの? よく見てごらん目がふたつ 鼻ひとつ 口ひとつで 耳ふたつまる顔で 面長で ちょっぴりタマゴ型(ホー)そっくりだけど ちがう ちがうけど 平気なぜなぜ 平気なの? そっくりだからこっそりと とりかえて にっこり笑えば わからないわたしでも あなたでも 誰でもかまわない(エーッ)そっくりだけど ちがう そっくりだけど ちょっとね
サンマの花が咲いている マグロの花はまだつぼみNYANNYA NYANNYA 待ちましょうマグロの花は まだつぼみイワシの花は花盛り カツオの花はまだつぼみNYANNYA NYANNYA 待ちましょうカツオの花は まだつぼみわたしの夢は空を飛ぶ 綿毛のように軽やかに見渡すかぎりのニボシの平原 幸せ者ジャパネの猫は さかな好き ロシアの猫は何が好き?NYANNYA NYANNYA 知りたいアラブの猫
遠い思い出の 空にただよう光るゆりかご お昼寝の舟わたしはいない どこにもいないさがしに行こう はるかな国へ遠い思い出の 空にただよい何を見ている お昼寝の月太古の眠り 植物の夢石に恋した かすかな記憶POM POM POM POM 花の種かくれているよ大事な秘密が わたしの中に風が心に 心が風に入れかわる道 お散歩の道わたしはひとり 見えない森で見えない鳥の歌を聴いたよ足には軽い 銀の靴をはきど
思い出して こんな風も凍る寒い夜更けわたしたち 寝静まる街を かけぬけた星になっていたことを激しく息を吐き ガードレールにもたれながらみつめてた おたがいの目をそれだけが できることのすべてだと見たくない 明日の朝 夢からさめて笑ってる 話してる あなたをわたし ずっとここにいるねえ あなたの目の中名前のない夜に おびえていたあなた わたし触れることで こわれるものがあることを知ってたから 誰より
わたしが動くのは ただ風を起こすために彼から誰かへと そしてまた べつの人へ風がとまるたびに わたしは すりぬける夕暮れがおりてきた 湖の小舟の中あなたが つぶやいた はじめての謎のような遠い国の言葉 答はさがさない言葉や約束には 何の力もない本当にやさしいものは ただ ひたいの汗と 吐息あなたの背中で 地球が ざわめいてるわたしは 山になる 森になる さかなになるさがしていたものが 今 この手の
いく度目の春か 帰らないあのひとを待つ 湖の家しゃんしゃん 水面にしゃんしゃん 雨降る千のさかなが はねる水音しゃんしゃん 心もしゃんしゃん ぬれるよかわかない わたしの涙時が過ぎれば 悲しみもうすれるものだと 誰が言ったしゃんしゃん 毎日しゃんしゃん 雨降る天の貝殻 あのひとの鈴しゃんしゃん 聴こえるしゃんしゃん わたしを呼んでいるのか 遠い空からしゃんしゃん 毎日しゃんしゃん 雨降る天の貝殻
ふるえる風が区切るたそがれここからさきは とても寒い子供は歌を聴いてる ほかの人は聴こえないごらん あそこで 誰か おまえを呼んでるさがして みつけて とって喰おうかおまえのやわらかな その肉をかくれろ早く もっと遠くへかくれろうまく 鬼の腕は長い冷たい 風も吹かない国へおまえは 息を切らし 逃げこむ来たね かわいい手足 あどけないくちびるおいで こわくはないよ 赤い舌を出すここは 人の記憶の 裂