さなぎ — 西郷葉介

通り過ぎる毎日 穏やかに続いていく坂道上れば
春の風が舞った 君の匂いがした
いつかふざけ合ったあのベンチに ヒラヒラ舞う蝶々のように
行き場を見失って 僕は一人になった

移ろう季節は心だけ 置いていくように 綺麗な花を咲かせる

星がこぼれそうな夜 寄り添い目覚めた朝 何気なく過ごした小さな午後も
いつでもここで この瞼の裏で蘇っていく 君をそばで感じてる
優しい春の風が君を包み込んで 涙など乾かしてしまえば良い
僕はここでそう願い歌うよ 泣き出しそうな遠い空の下で

汗ばむ夏の日には 唸るように鳴く蝉の声を聞いてた
僕に寄りかかった 頬にそっとキスをした

幸せに慣れすぎていた こんな日がずっと続いていくと思った

耳を澄ましてたら聴こえていたはずの 心の声に気付かぬまま
あの蝉のように君は泣いていたんだ きっと何度も 何かを訴えかけるように
夏の暑い日差しが 胸の痛みも 僕の記憶ごと溶かしてしまえば良い
君は前を向いて また歩き出すんだ もっとたくましい誰かの手を取って

また生まれ変わって 君と出逢うまで
僕はさなぎになって その時を待ってる
秋冬を越えて 光の届かぬ黒い土の下で いつまでも

星がこぼれそうな夜 寄り添い目覚めた朝 何気なく過ごした小さな午後も
いつでもここで この瞼の裏で蘇っていく 君をそばで感じてる
優しい春の風にいつか羽を広げて 君の元へと飛び立てる日まで
僕はここでそう願い歌うよ 泣き出しそうな遠い空の下で