素顔 — 藤あや子

変わり果てた鬼でも 見るみたいな眼が
反(かえ)ってこの胸 燃えあがらす
かわいそうな女を 見るみたいな眼で
下手に触った あんたのせい

嫌いと告げれば 諦めるなんて
この世の女は 柔なのね
二度と来るなと 禁じられても
目覚めた炎は 消えないわ

難しいこと わかんない
ちょいと お頭(つむ)が 弱いもんだから
酷い言葉で 罵られても
あたいのことなら嬉しいの

あんたがあたいを生んだのよ

熟し過ぎた果肉の 生ぬるい蜜
満ちてく念(おも)いを 止めたいなら
飛び出そうな命を もぎとるしかない
上手く狙って 突き止めてよ

綺麗なことしか 見えないだなんて
どこまで男は 野暮なのよ
穢(けが)れる前に 戻りたいから
元居た所を 求めるの

小賢(こざか)しいこと わかんない
ちょいと 器量が 悪いもんだから
喜ばすのが あんたの役目
使い果たすのが あたいの役目

こんな女 見たことないって
あんた 言ったじゃないの

あんた その眼を 逸らすほど
どうしようもなく 疎ましいのなら
早くこの身を 滅ぼしとくれ
あたいの息の根 止めとくれ

あんたをあたいに残すのよ
あんたにあたいを残すのよ