空夢の日々 – 藤あや子

酔いしれて帰るひとりの部屋
浮かぶのは ふるさとのあなた
指先もふれず別れを告げた
陽炎(かげろう)のような恋なのに

古びた駅のホームに立って
ずっと手を振る 少年のあなた

おぼえていますか ちぎれ雲の下
忘れないと約束した
どこまで堕ちても 生きてゆけるのは
あなたがまだ胸にいるから
陽射しを浴びた姿のままで

口紅をひいた鏡のなか
投げやりなまなざしの私
あの頃の面影さえなくした
愛を見つけてくれますか

つたない文字の手紙もいつか
途絶えたままで 時だけが過ぎた

おぼえていますか 夏草の匂い
希望色に染めた心
無邪気な季節の 私で逢いたい
叶わないとわかっていても
グラス片手にまた祈ってる

おぼえていますか 扉(ドア)が閉まるとき
頬こぼれた あの涙を
どこまで堕ちても 生きてゆけるのは
あなたがまだ胸にいるから
陽射しを浴びた姿のままで
抱きしめている 空夢の日々