ご機嫌さんよ 達者(たっしゃ)かねおらも父(とと)さも 変わりなく朝もはよから 畑仕事月のデッキで故郷(ふるさと)しのび 読み返す母の 母のたよりの あゝ なつかしさご機嫌さんよ 達者かねことしゃ実りも 豊作で村は祭りの 笛太鼓書いた手紙にあの娘(こ)の写真も 添えてある母の 母のやさしい あゝ 故郷(くに)だよりご機嫌さんよ 達者かねぼくも返事に 書いている幼なじみの 故郷(くに)だより波を枕に
母のいない故郷は風の村無人駅に降りりゃ子供にかえれない淋しさ母さんのせいだよただ時の流れにたたずむばかり母のいない故郷は雪の村暗い夜道走ってくぐり戸うしろ手に閉めれば懐かしい囲炉裏ばたただほだ火とろとろくすぶるばかり母のいない故郷は春の村かごに草を摘んで手拭いかぶってく村人母さんに似てたよただ後姿を見送るばかり
ここから出たら 母に会いたいおんなじ部屋で ねむってみたいそしてそして 泣くだけ泣いてごめんねと おもいきりすがってみたいここから出たら 旅に行きたい坊やをつれて 汽車にのりたいそしてそして 静かな宿でごめんねと おもいきり抱いてやりたいここから出たら 強くなりたい希望(のぞみ)を持って 耐えて行きたいそしてそして 命のかぎり美しく もう一度生きて行きたいそしてそして 命のかぎり美しく もう一度生
もうちょっと 想い出があったら悲しさだけでは 生きていないのに僕たちには 想い出が無い肩を抱いて歩いた事もベンチで笑い合った事も手を振ってサヨナラした事もあるのは 部屋の片隅で泣いていた君の後ろ姿もうちょっと やさしさがあったらあんなに傷つき やつれなかったろ僕たちには 想い出が無い汽車に乗って旅した事もホテルであって飲んだ事も映画館へさそってみた事もあるのは頬にこぼれてたひと粒の君の涙だけさある
ぐっすり眠れたかい 疲れはとれたかい苦労かけたね あけみ楽しかったよ 君との人生或るときは 母親代わり或るときは 恋人さ君はいつだって 凛としていたねしあわせだったのかい 一度も訊かぬうち君に去かれた 俺に庭の椿も 答えてくれぬ貧しさを 力に変えて分けあった 喜びもいまは懐かしい 君の贈りもの君には天国が 待っててくれるから二度とあえない あけみ君が垂らした 命の糸を登れずに 落ちてく俺が見えてき
思い 出したんだとさ逢いたく なったんだとさいくらすれても 女はおんな男心にゃ 分かるもんかと沖の煙を 見ながらああ あの娘が泣いてる 波止場呼んで みたんだとさ淋しく なったんだとさどうせカーゴの マドロスさんは一夜どまりの 旅の鴎と遠い汽笛を しょんぼりああ あの娘が聞いてる 波止場なみだ 捨てたんだとさ待つ気に なったんだとさ海の鳥でも 月夜にゃきっと飛んでくるだろ 夢ではろばろそれを頼りに
吹けば飛ぶよな 将棋の駒に賭けた命を 笑わば笑えうまれ浪花の 八百八橋月も知ってる おいらの意気地あの手この手の 思案を胸にやぶれ長屋で 今年も暮れた愚痴も云わずに 女房の小春つくる笑顔が いじらしい明日は東京に 出てゆくからはなにがなんでも 勝たねばならぬ空に灯がつく 通天閣におれの闘志が また燃える
おふくろも親父も みんな達者だぜ炉端かこんで いつかいつしか東京のお前達(めぇたち)二人の話に 昨夜(ゆんべ)も更けたよ早くコ 早くコ田舎へ 帰ってコ東京ばかりが なんでいゝものか好きならば一緒に 連れてくるがいゝどんな娘か おらも兄なら見たいもの妹も嫁こにきまって 今年は行くだに早くコ 早くコ二人で 帰ってコ幼なじみも 変りゃしないよあん時は 別れが辛くて泣いた駅俺は馬っこの背で 手を振りさいな
想い出に降る 雨もある恋にぬれゆく 傘もあろ伊豆の夜雨を 湯舟できけば明日の別れが つらくなるたとえひと汽車 おくれてもすぐに別れは くるものをわざとおくらす 時計の針は女ごころの かなしさよもえて火となれ 灰になれ添えぬ恋なら さだめなら浮いてさわいだ 夜の明け方は箸を持つ手が 重くなる
雨の夜に あなたは帰るそんな気がして ならないのすがりついたら 離さないわ濡れたあなたの カルダンコートこれもかなしい 夢かしら雨の夜に あなたは帰るまるでなんでも ないようにいいのあなたは だまっててすぐにいれるわ ブラックコーヒーひとり芝居を するあたし雨の夜に あなたは帰るいつも信じて 待ってるわ泣いて甘えた 遠い日の夜をおもえば また燃えてくるそれがせつない しのび雨
波の小唄に 三味線弾けばしゃれた奴だと 仲間が笑う陸(おか)が恋しさに ついつい負けて呼べば未練が 呼べば未練がエーエー 夜霧にとけたよ青い月夜にゃ 泪で弾いた破れ三味線 あの娘の形見情あったなら 男の胸を帰える鴎よ 帰える鴎よエーエー 伝えておくれよなれぬ手つきで 沁みじみ聞かしゃ荒れた心も ほろりと泣ける無事か達者でか 淋しいえくぼ辛い想いも 辛い想いもエーエー しばしの事だよ
酒があたいに 惚れたのさふられたあたいに 惚れたのさきらいさ きらいさ酒なんて 大きらいさ夜がクスクス 笑うから飲めるふりして 飲んでるだけさ愚痴があたいを 責めるのさ昔の約束ァ どうするッてさきらいさ きらいさ愚痴なんて 消えちゃいな夜がジロジロ 見てるからちょっとしんみり してみただけさ夢があたいに からむのさまことの心を きかせろってさきらいさ きらいさ恋なんて まッぴらだ夜がゲラゲラ 笑う
あなたの憎くさと いとしさがからだのなかを 流れます小犬のように 捨てられた女の恋の みじめさを酒と泣きたい 酒場川男のこころも 読めないでおぼれるだけの 恋でした死ぬより辛い 裏切りを怨んでみても 無駄なのね涙こぼれる 酒場川私と暮した アパートであなたは誰と いるのでしょうグラスの酒に 酔いしれて心の傷を 洗いたいネオン悲しい 酒場川
故郷の 蒼い月夜に流れくる 笛の音きいて君泣けば 私も泣いた初恋の 夢のふるさと おさげ髪 君は十六春くれば 乙女椿を君摘んで 浮かべた小川思い出は 花の横顔故郷へ いつの日帰る屋敷町 古いあの町月の夜を 流れる笛に君泣くや 妻となりてもああ 花も恋も帰らず流れゆく 君の夕笛
志津子と呼べば霧が流れる俺の心に からみつく霧は志津子の 溜息かム……俺はお前が 好きだった志津子と呼べば霧が流れるヘッド・ライトの 束の間に白いうなじが またうかぶム……消えておくれよ なにもかも志津子と呼べば霧が流れる未練ごころに つまづいて泣いた男が ここにいるム……きっとしあわせ なっとくれ
新宿は西口の間口五尺のぽん太の店がとうとうつぶれて泣いてるヒロ子三畳一間でよかったらついておいでよ僕んちに東京は広いから親も故郷も知らない人がヒロ子の他にもいっぱいいるさ泣くのはいいけど泣いたなら僕の笑顔が見えなかろうこれからはどうなるの赤いランプの最終電車しょんぼり見送るヒロ子の涙風呂敷づつみを中にしてつなぐ手と手に霧が降る
想い出の 想い出の湯の街あかり女ゆえ女ゆえ 涙にぬれてさよならを さよならを告げたあの夜汽車がくる 汽車がくるわかれを連れて海沿いの海沿いの さびれた宿に泣き虫の 泣き虫の影がくずれるいやだよと いやだよと泣いてたあの娘いやだっていやだって ゆかなきゃならぬ湯の街に 湯の街に咲いた恋花矢絣(やがすり)の 矢絣の似合うほそい娘おまえにはおまえには 母の田舎で針仕事 針仕事させておきたい
空(から)にしてって 酒も肴も今日でおしまい 店仕舞五年ありがとう 楽しかったわいろいろお世話になりましたしんみりしないでよ…… ケンさん新宿駅裏 「紅とんぼ」想い出してね…… 時々はいいのいいから ツケは帳消しみつぐ相手も いないものだけどみなさん 飽きもしないでよくよく通ってくれました唄ってよ騒いでよ…… しんちゃん新宿駅裏 「紅とんぼ」想い出してね…… 時々はだからほんとよ 故里(くに)へ帰
春には 柿の 花が咲き秋には 柿の 実が熟れる柿の木坂は 駅まで三里思いだすなア ふる里のヨ乗合バスの 悲しい別れ春には 青い めじろ追い秋には 赤い とんぼとり柿の木坂で 遊んだ昔懐しいなア しみじみとヨこゝろに返る 幼ない夢が春くりゃ 偲ぶ 馬の市秋くりゃ 恋し 村祭り柿の木坂の あの娘の家よ逢ってみたいなア 今も尚ヨ機織りながら 暮していてか
生みの親より 育ての親の背で見た夢 いくつやら里子悲しや 瞼の底で一つ消しても 影が重なる母二人風に吹かれて 馬場のはずれ何も知らずに 来た昔野良着姿で 泣いてた母のやせた肩さき またもちらつくほの明りひもじかろよと 優しく抱いてもらい乳して くれた母無事(まめ)でいるやら ねんころ歌が月の夜空に もしや聞こえて来やせぬか
坊やごめんね ゆるしてねパパと別れた このママを誰も知らない 涙を抱いて北国の故郷へ帰る 最終列車坊やおまえと 二人きり生きてゆくのよ つらくとも泣いてねむった かわいい顔にあの人の面影浮かぶ 最終列車坊やごめんね なにひとつ買ってやれない ママでしたおもちゃがわりの 汽車ポッポにのってわらぶきの田舎へ帰る 最終列車
巷の唄は どんなうた――むしり取られて 捨てられて女がなきなき うんだ子の涙のように ショッパイ唄だ巷の唄は どんなうた――不渡手形を 握りしめ霙(みぞれ)の街に ゆきまよう中年男の 命の唄だ巷の唄は どんなうた――父になれない 作曲家(うたかき)が追いつめられて ベソかいて酒の雫(しずく)で まとめた唄だ
昔のままに お前を抱けば白い花びら 散らすだろ別れて 流れた春・夏・秋・冬雁も通わぬ 歳月河に愛を 愛をかき消す風が吹く女は今の 暮しに馴染み可愛いがられりゃ それでいい男はさすらい春・夏・秋・冬酒の河だよ 歳月河は飲んで 飲んで忘れる事ばかり襟元合せ うつ向きながら誰のものでも ないと泣くお前は命さ春・夏・秋・冬橋を探そう 歳月河に愛の 愛の名残りの月が出る
昨夜(ゆうべ)も君の 夢見たよなんの変りも ないだろね東京恋しや 行けぬ身は背のびして見る 遠い空段々畑の ぐみの実もあの日のまゝに うるんだぜ流れる雲は ちぎれてもいつも変らぬ 友情に東京恋しや 逢いたくて風に切れ切れ 友の名を淋しく呼んだら 泣けて来た黄昏赤い 丘の径田舎の駅で 君の手をぐっとにぎった あの温み東京恋しや 今だって男同士の 誓いなら忘れるもんかよ この胸に抱きしめながら いる俺
泣けた 泣けたこらえ切れずに 泣けたっけあの娘と別れた 哀しさに山のかけすも 鳴いていた一本杉の 石の地蔵さんのよ村はずれ遠い 遠い想い出しても 遠い空必ず東京へ ついたなら便りおくれと 云った娘りんごの様な 赤い頬っぺたのよあの泪呼んで 呼んでそっと月夜にゃ 呼んでみた嫁にもゆかずに この俺の帰りひたすら 待っているあの娘はいくつ とうに二十はよ過ぎたろに
破れ単衣(ひとえ)に 三味線だけばよされ よされと 雪が降る泣きの十六 短い指に息を吹きかけ 越えてきたアイヤー アイヤー津軽 八戸 大湊三味が折れたら 両手を叩けバチが無ければ 櫛でひけ音の出るもの 何でも好きでかもめ啼く声 ききながらアイヤー アイヤー小樽 函館 苫小牧鍋のコゲ飯 袂(たもと)で隠し抜けてきたのか 親の目を通い妻だと 笑った女の髪の匂いも なつかしいアイヤー アイヤー留萌 滝川
波の谷間に 命の花がふたつ並んで 咲いている兄弟船は 親父のかたみ型は古いが しけにはつよいおれと兄貴のョ 夢の揺り篭さ陸(おか)に上って 酒のむときはいつもはりあう 恋仇けれども沖の 漁場に着けばやけに気の合う 兄弟鴎力合わせてョ 網を捲きあげるたったひとりの おふくろさんに楽な暮らしを させたくて兄弟船は 真冬の海へ雪の簾(すだれ)をくぐって進む熱いこの血はョ おやじゆずりだぜ
愛し過ぎれば 別れが来るとそれがお前の くちぐせだった長い冬にも 笑顔で咲いた冬知らず 冬知らずお前が好きな 花だった遠く汽笛の 聞こえる宿で声を殺して 背中が泣いた水もやれずに それでも咲いた冬知らず 冬知らずさびしい旅の 花だった風が鳴るたび お前が俺を呼んだ気がする こころが切れる俺の若さを 許して咲いた冬知らず 冬知らず春さえやれぬ 花だった
流氷とけて春風吹いてハマナス咲いて カモメも啼いて遥か沖ゆく外国船の煙もうれし宗谷の岬流氷とけて春風吹いてハマナス揺れる宗谷の岬吹雪が晴れて 凍(しば)れがゆるみ渚の貝も 眠りがさめた人の心の扉を開き海鳴り響く宗谷の岬流氷とけて春風吹いてハマナス揺れる宗谷の岬幸せ求め 最果ての地にそれぞれ人は 明日(あした)を祈る波もピリカの子守のように想い出残る宗谷の岬流氷とけて春風吹いてハマナス揺れる宗谷の岬
人の世の坂 ころげ落ち裏目裏目と 生きてきたふらり風待ち 港の食堂熱い番茶を すすりながら俺はお前を 目にとめたいい女だと 焼きついたずっとここかと 聞いてみたずっと一人と 目を伏せた北の風待ち 港の食堂海が荒れたら 淋しだろうねそっとかばって やりたくてジャンパーを脱ぎ 抱きしめた所帯持つよな 柄じゃない男のら犬 そんな俺ふらり風待ち 港の食堂ゴムをほどいた 長い髪の熱い思い出 もらってくやけに