ひなびたままの 船着き宿に身を寄せながら ふく涙辛い辛い 私を抱いてあなたその手で その胸でいさり火 海鳴り 夏まぢかカモメの群れを 追い立てるよに前ぶれもなく 雨がふる寒い寒い 心も肌もあなた思えば 尚更にいさり火 桟橋 傘もない湯あがり後の この淋しさを包んで欲しい
もう誘わないでと あれほど泣いたのにこんな雨に濡れたまま 待つなんてずるいひとまた眠りもせずに 帰ってゆくんでしょならば誰かひとりでも 幸わせになさいな妬んで恨むのが 女じゃないですかさみしがりやを 責めますか夢でいいから 夢でいいから好いてるうちに 終わらせましょう夢でいいなら 夢でいいならあなたの胸で 花になれますもう着てもらえない 寝間着は捨てさせて化粧だけで歳月を 隠せなくなるまえに忍んで
桃を二つ 買って帰ったあなたと 一つずつ 食べようと思って狭い部屋に 西日がさしてあなたは いなかった 夕暮れの手品みたいにこんなはずじゃなかったわ誰だって 明日なんか 見えないけれどこんなはずじゃなかったわ蜩の雨の降る中 私 途方に暮れた前の女と いっしょにいるとふわさが 聞こえるわ 秋風のお節介あなたいつも