海辺の画廊 – 細川俊之

北の海辺の小さな町は
あなたが最後に生きた場所
愛の座折に耐えられるほど
強くはなかったあなたの海辺
懐かしさとは哀しいものさ
水にとかれて髪は藻になり
白いからだにまつわりついた
日暮れの海は絵にかける……

流木をひろいあつめて
朽ち果てた船のキャビンに
あなたのための画廊を作る
風と浪のうたをきき乍ら
あなたをえがいた絵と一緒に
ある日砂のまぼろしになりたい。
砂のまぼろしに……

北の海辺をさすらい乍ら
あなたをしのんで立ち止まる
寒いしぶきと灰色かもめ
もう年おいた夕映えの雲
懐かしさとは哀しいものさ
どんな嘆きも言葉にならず
長いまつ毛をとざしたままで
死んだあなたを絵にかこう……

あなたの終りえがいた絵だけ
拾いあつめた海辺の画廊
ほろびる愛は砂のまぼろし
風の向うに消えて行く……