沈める月 – 武田理沙

翡翠の欠片を一雫
誰か呼んでいるね
低い空は溶け始めている
宵へ戯れて

綺麗な花冠だけ集めて
注ぐコーラルレッド
その憂いを唇に当てる
十字を刻む腕

途絶える足音
ざわめく祭壇

声も指先も
つかの間の日々も
風になり消えてゆく

旅が綾なす理
忘れていないか
穏やかに荒れる景色を
雲が覆い尽くしても
道は続いて
限りない超弦に沈む

貴い 籠の中の鳥が
告げる 黎明に
櫃を 空高く放って
誓う 再会を

いつの日か
ここでまた会える

声も指先も
つかの間の日々も
風になり 消えるなら
纏う 唯一の
色彩に変えて
永遠に 描き出して

月が綾なす理
恐れていないか
穏やかに荒れる景色を
雲が覆い尽くすだろう
道を塞いで
限りある超弦に惑う

虚空へ沈む命を
この手に抱いて
予感と幻想の狭間へ
旅路を照らす
月の導は
絶界を超えて
生き続ける

結んで開いた 脈を伝って
紡いで繋いだ 語り継がれる
防いで塞いだ 空の雫よ
何処かで誰かの 胚芽になれ

結んで開いた 脈を伝って
紡いで繋いだ 語り継がれる
防いで塞いだ 弔いの唄
パレンタリアの月へ 捧ぐ