お母さんおぼえていますか – 楠トシエ

「あの蝶々とって」
ダダをこねたわたし
「蝶々だってひとりぼっちになったら寂しいのよ」
やさしくそういったお母さん

涙ぐんで見あげたら
お母さんの瞳の中に
小さな蝶々が舞っていました

あれから何年たつでしょうね お母さん
思い出だけは 今も私の胸の中で
ヒラヒラと舞いつづけています

お母さん
おぼえていますか お母さん
まだアパートの 一部屋のころ
遠い高原に いきましたね
冷たい水と 甘い空気を
一杯のみましたね
峠で お父さんて 呼びましたね
お母さん 黄色いお帽子でしたね

お母さん
おぼえていますか お母さん
やっぱりこんなに 雨が降ると
屋根から ポタポタ もりましたね
そしたら しずくの音に合わせ
うたって くれましたね
私は窓辺で ハーモニカ吹いて
お母さん 遠い昔の 事ですね