あなたのいない空に星はめぐり白い小舟のようにゆられていくあなたのいない海にひとり浮かび真昼のちぎれ雲をつないでいく美しくいられる 薬はなくても夏は来る 夢のように
吹き抜くすきま風白くかたどったうなじの艶っぽさを通り抜けて舞い上がっていく帽子を取る間もなく遠くへさらっていったたまにかすめた黒い雲を越えて消えていくたしかに夏の日は若くいろどって私を誘ったのに音もなく遠ざかっていく窓辺に残る影おでこにはりついた影雨を降らせばやがて七色の時が来るどこまで恋は続くだろうか恋は続くだろう酔いをひとりでさます間虫が息をひそめて待っている間に...もういちどすきま風白く浮
霧のように夜が空をおおいかくしてあなたの好きな歌をうたう帰り道寂しくて仕方ない新しい服をまとって街を歩けば人ごみを通る風と交わすおしゃべり寂しくて仕方ない懐かしい人へ短い手紙を書いた今頃はきっとまだ淡い夢のなか寂しくて仕方ない暮れかける窓の外へ耳を澄ませばあたたかい夕陽のなかを電車は走る寂しくて仕方ないとめどなく夜は過ぎて朝を迎えよう明日は星がめぐってあなたと出会おう寂しくて仕方ない
過去と未来より 来たる旅人そっとその目を閉じ 耳を澄ませる長く影を曳く 強く呼ぶ声誰も触れられぬ 心より出ずる闇からの影 水に映す帆岩陰を通って 走る犬の尾夜更けに集う 若い恋人黙って天を見る 年老いた人過去から未来から 誰もみな時を合わせる遍く年月の 響きを重ねて恐れることなく 悲しみを越えそっとその目を閉じ 耳を澄ませる誰かを悼む火の 煙る炎 高く高くと燃え立つ僕はまだ 慈しみの中船は海をゆく
たそがれ時になつかしく あなたを想う待ちくたびれてなお匂う 真夏の静けさ帰らぬ人の恋し 道はぬかるみ歌ったわ 気の休まるまで今にも傾きそう 灰色の空雨だれ 洪水 あなたの部屋の窓空 仰向けでコート脱ぎ捨て朝までひとりで眠るの昼 ベランダでいつも無理して吹かしてる悩みの種ねもういいの待てど暮らせど戻らない あなたを想う日陰に心奪われぬ 私のいじらしさ雨よ降れまた降れ 石をうがつように溶かしてよ 気の
ああ一日の終わりにさしかかり私の部屋を死の影が覆うああこの手も足も目も鼻も耳もすべてがあなたのものおやすみよ かわいいひと薄紅の夜明けがまた来たなら半分開いた冬の花を探しに行こう
匂いいずるちんちょうげの花によいしれる町通りのさま目ざめさなびき朝もや日をあびて 時をまてずああ 春一番の風は激しく見上げいずるもくれんの花にちりそめし白波のさま飛び立ちいさりさける色舞いもうて ちょうになりぬああ 春一番の風は激しく
水たまりが二人を映して 泣いている白い太陽の 長いあくびに二つの影が伸びていくまでの一瞬に風が背中を 押してゆく風が背中を 押してゆく静かな灯りのなかであなたが私にレンズを向ければ私の瞳の中にあなたが溶けていくまでの一瞬に花火は遠く 鳴り止まぬ花火は遠く 鳴り止まぬどこまでも道草を続ける間に夜は 進むのだけれどどちらが先に 別れの言葉を言うのか惑う一瞬に雨の木が鳴り 嵐が通る雨の木が鳴り 嵐が通る
夕暮れに目を伏せたなら涙もこぼれましょう夢の終わり消えかける光に影を落としていく荷物を捨ててしまったならどんなにか楽でしょう愛の渇き水を求める鳥は風のように鳴く桑の実色の あなたの瞳いつかのように いま笑いなさい海の青いところへ 着くまで夜を くぐりなさい唐紅の 私の唇にいつかのように いま歌いなさい静かな胸の高鳴り 遠くで私のために いま歌いなさい空の青いところへ 着くまで夜を くぐりなさい
あたたかい ろうそくの灯が私を照らすのでなにひとつ 心配いらない静かに眠れますコデマリの 花が咲いたらいつでも思うでしょう透き通る 白い寝顔は神様のよう飛んでいく 丸い煙のようにそしてもう一度生まれたら 私にめぐり会います知らない街角で波のように 月日は過ぎて私も召されたらやわらかい 川の淵まで迎えに来てください飛んでいく 丸い煙のようにそしてもう一度生まれたら あなたにめぐり会いますバラの咲く庭
水色の 風の音耳を撫でたら旅人のまぶたに 魔法がかかるただ 見えるのは雲の影それからパレードの声が聞こえる赤色の ワインにほろ酔いのころ旅人のまぶたの 魔法が解けるさあ 玉手箱を開けましょうそしたらパレードは煙に消えてくそれから…風の色は もとの水色
東の空から アンドロメダの微笑みをたずさえ 夜は来るどこから生まれて どこへ消えるの瞬くはサソリの 赤い星憂いは銀河の渦のなかに君とゆうげを囲んでまた明日の 話をしよう
暗がりは 怖くはないよと教えたでしょう晴れ着は 持たずに行きなさい重たいから歩みのはじまりの時の扉を 開けましょうあなたはあなたでわたしはわたしでぬかるみに 足を取られては喜びの 頂きに言祝ぐきれいな靴でなくても 今ならどこへでも行けるでしょう命がまた めぐる時は春のように 咲きなさいあなたはあなたでわたしはわたしで