あいつとライブハウス – 果歩

赤青緑に黄色それから白と黒
ライトはずっと前の方で知らないバンドを照らす
ギターを持った前髪の長い若者が真ん中で
少し外し気味な歌に息を吹き込む

それだけでなんとなく音楽やってるみたいだね
視覚も聴覚もあのバンドに奪われてるはずなのに
気持ちも頭も隣のあんたに奪われっぱなしなんだよ

2人聴こえてるのは知らないバンドの微妙なラブソング
「愛してる」とか「愛されたい」だとか好きなことだけは伝わった
あからさまにつまんなそうに眠そうにうつむいて
「おもしろくねぇ」って吐き捨てる
クソみたいなところ嫌いじゃないよ

いつもより長い30分 「早く終われよ」
ボソッと出したため息交じりの声は
あのバンドの覚えづらいサビのメロディより
はっきり届いた
まだ最後までそこで愚痴を吐いて居て

2人聴こえてるのは知らないバンドの微妙なラブソング
「愛してる」とか「愛されたい」だとか好きなことだけは伝わった
あからさまにつまんなそうに眠そうにうつむいて
「おもしろくねぇ」って吐き捨てる
クソみたいなところ嫌いじゃないよ

2人聴こえてるのは知らないバンドの微妙なラブソング
「愛してる」とか「愛されたい」だとか単純な言葉が痒かった
「つまんねぇ」「眠てぇ」「くだらねぇ」
でもあんたはそこにいるんだね
ほら廊下でタバコ吸ってきなよ 帰ることだってできたでしょう?
聴かない方法はいくらでもあった
いま隣で文句言うあんた
明らかに違うコードが響いた
舌打ちであたしはそれに気づいた