九段の母 – 川中美幸

上野駅から 九段まで
勝手知らない 焦(じ)れったさ
杖を頼りに一日がかり
悴(せがれ)来たぞや 逢いに来た

空を衝くよな 大鳥居
こんな立派な 御社(おやしろ)に
神と祀(まつ)られ 勿体なさよ
母は泣けます 嬉しさに

両手合わせて 跪(ひざまず)き
拝むはずみの 御念仏(おねんぶつ)
ハッと気付いて うろたえました
悴(せがれ)許せよ 田舎者

鳶が鷹の子 生んだ様で
今じゃ果報が 身に余る
金鵄勲章(きんしくんしょう)が 見せたいばかり
逢いに来たぞや 九段坂