コンチェルト – 大江千里

そでをおろし通る小さな階段に
少し肩に落ちる西日をまどろんだ
見かけだおしの誰かを愛してしまいそうな
気がする 不思議な午後
季節はずれの何に迷いを残して
ふと佇んで息を飲み込んでしまう
市電が通る度にサッシに影が落ちる
時計にはさんだ料金証

ようやくぼくも落ちついて
仕事もうまくいってる
暮れなずむ光と影を追って

幾年月か古典はぼくの魂をゆする
油をさしたはがねのように
たたく鍵盤の上 ゆるく感じる世界に
何が見える? 何が聞こえる?

遠く離れた友だちに手紙を書いた
形のくずれかけたローファーを直した
何かが変わりそうで きっと何ひとつ
変わらないようなぼくでいるよ

お腹のすかしたきみのこと
入口で待たしたまま
一番先の言葉が見つからない

幾千分の奇跡はこんな月並なぼくさ
ちょっとずつきみを愛するような
ぼくはきっとこれがいい
多分きみもこれがいい
こんなことは今までなかった

幾年月か古典はきみの魂をゆする
すべをなくした小鳥のように
たたく鍵盤の上 ゆるく感じる世界に
何が見える? 何が見えない?

幾千分の奇跡はこんな月並なぼくさ
ちょっとずつきみを愛するような
ぼくはきっとこれがいい
多分きみもこれがいい
こんなことは今までなかった

幾年月か古典はぼくの魂をゆする
油をさしたはがねのように
たたく鍵盤の上 ゆるく感じる世界に
何が見える? 何が聞こえる?