宇宙の記憶 – 坂本真綾

潮汐(うしお)が留め処なく満ちては引いているの
太陽と太陰(つき)は最古の役目を背負っている
草木が噤んだまま萎えては萌えているの
そう、人間も宇宙にただ肖っている事態
年若く傲慢なものほど体はいやに旺盛で
愚かしいなりにも飽きては飢えているの
損しては得したりまた冴えては鈍ったり
山岳(やま)が遠のく雲を乞うては去(いな)しているの
女性(おんな)と男性(おとこ)は太古の掟を請け負っている
果実が潜んだまま朽ちては熟しているの
そう、人間も宇宙をまだ全然ご存じない
年老いて謙虚なものほど体は草臥れ儲け
結局賢いなりにも凪いでは時化しているの
害しては益したりまた恥じては誇ったり
あなたのまなこが なみだを堪えている
それは? うれしくて? かなしくて?
何てかわいらしくて何てかわいそうなの
もう全部くださいな 瞬間を永遠にして
光と影の応酬はいつも体へ丁度同期(シンク)して
酸いも甘いも同じだけ交互に味わうのよ
そう、人間は今原初の閃きを残している
だれもが話すたび覚えては忘れているの
愛しては怨んだりまた病んでは癒えたり
あなたは生きている