ひとふしのメロディーが朝から頭を離れないくちの中でくりかえし小さく歌いどこかで聞いたと 記憶のもやの中を探し回るたどり着けずに正午を過ぎてガラス戸ごしに曇りの空を眺めている どこで聞いたのだろう この微妙な節回し子守唄のようでもあり ラメントのようでもある 愛しあったり愛されない苦しみにひそかに裏切りに走ったり音もかたちもないふとした凪のような自分であるのかほかの人であるのか消え去りやすく けれど不意
ごらんあそこをあの街角をお葬式が行くとぼとぼとノボリを立ててカネを鳴らして きっとお母さんが死んで子供が泣いている ごらんあそこをあの土手の上をお葬式が行くぞろぞろと風に吹かれて雲に追われて きっと恋人が死んで婚約者が泣いている ごらんあそこをあの空の彼方をお葬式が行くすいすいと月面をよぎって星星をくぐって きっと名も無き人が死んで名も無き人が泣いている 行け行けお葬式はるかなる墓地へ飛べ飛べお葬式宇宙の彼方
それは美しい伯母様の家へ行く道であったそれは木いちごの実る森へ行く道であったそれは夕暮ひそかに電話をかけに行く道であった崩れ落ちた町のなかに道だけが昔ながらに残っている いそがしげに過ぎてゆく見知らぬひとびとよそれぞれがそれぞれの中に違った心をもってそれぞれの行先に消えてゆくなかに僕は一個の荷物のように置き去られて僕は僕に与えられた自由を思い出す 右に行くのも左に行くのも今は僕の自由である 戦い敗れた故
六月の火事のように明るく 生まれたばかりの蝶が燃えていた手旗信号で愛のメッセージ 誰かに飛ばしたいつかの草原 二十万のひまわりがさよなら 肖像画が笑ってたその広場天気予報も最終回 深々礼したいつかの夕暮れ 世界が完全に晴れた日 飛んだ世界が完全に晴れた日 行った 戦場では雨傘が健気に 弾丸をはじく夢を見つづけた筒抜けの秘密 愛のメッセージ 胸を撃ち抜いたいつかの街角 世界が完全に晴れた日 飛んだ世界が完全
母は患う人に体温計を当てている父は実現しない橋の図面を引いている 暗闇で目を瞑る愛 雨水で薄まった愛世界は昨夜 愛に満ちてた 姉は知り合いの子を引きとって育てる弟はシャッターの無いカメラを手に街に出る 電話の途中息殺す愛 歌とは無縁の愛世界は今朝 愛に満ちてた 兄は慣れない銃を人に向けていた妹は恋人の盗みを手伝うとさらりと言う 灰皿でくすぶる愛 天窓を逃げだす愛世界は午後 愛に満ちてた 女が枯れかけた花に水を
てんでばらばら電動ミシンのうなり声が響く路地の乾いた呪文よここから先は海であり海にひそむ民族であり梅雨どきのトタン壁にしがみつく蔦の濃緑!に眼を射られてかがみこむほどの暑さだ!いっそ裸足で歩いて頭に長靴でもかぶせたらどうだキムさんはそう言うのであり俺はひねた山羊の肋肉を頬ばりながら盗むときの眼で焼酎を飲むのであり肋の中に舌を差し込むのである 音もなく破れた窓ガラスのバスが遠い光州の町を走り過ぎる銃を
こん・りん・ざい こん・りん・ざいこん・りん・ざい こん・りん・ざい すこし前まで人は口を揃えて言ってた こん・りん・ざい こん・りん・ざいこん・りん・ざい こん・りん・ざい 戦争だけは こん・りん・ざい戦争だけは こん・りん・ざい こん・りん・ざい こん・りん・ざい
ぼくはムギを知らない 粉のムギしか知らないぼくはムギを知らない 粉のムギしか知らない ムギの写真をたくさん目にしてムギを知らずに 生きてきたのだムギを知らずに 生きてきたのだ 札幌市民としては 大して困らずに日本国民としても 大して困らずに地球人としては さてどうだったのか ぼくはムギを知らない 酒のムギしか知らないぼくはムギを知らない 酒のムギしか知らない ムギという字をたくさん目にしてムギを知らずに 
わたしは月にはいかないだろうわたしは領土をもたないだろうわたしは唄をもつだろう 飛び魚になりあのひとを追いかけるだろう わたしは炎と洪水になりわたしの四季を作るだろう わたしはわたしを脱ぎ捨てるだろう血と汗のめぐる地球の岸にわたしは月にはいかないだろう
熱い風 吹いてた街角に 吹いてたさしのべる きみの手うけたのは ぼくだね誰もが みな叫ぶ俺たちの 時代だとひたすらに 信じてどこまでも 走った 今はもう 人影はなく路上には デジャブー幻想の 過ぎゆく季節の中でくりかえす 思い出にタイム・ラグ 熱い風 吹いてた街角に 吹いてたあいつらは 待ってた街角で 待ってた確かな 思いと自由のうたに 乾杯たどりつく ところもわからずに 走った 夕焼けは 砂の蜃気楼朝
窓の喧噪 聞こえないテレビのニュース 解らない外の天気は 気づかない帰り支度は 許せない 君の寝息が 動かない死んだふりでも ないみたい叩き起こして もう一回さっきみたいに 見詰めたい 拒絶して 気絶して 断絶して GOOD来るように愛してね ハッピーエンドが 描けない半端な喜劇じゃ 笑えない一寸ずれてる 好き嫌い死にたいなんて 認めない 遠いどこかで 殺し合い今は僕たち 忍び逢い苦い経験 生かし合い残り少
永遠の歌 永遠の星 永遠の愛 ただの夢じゃなく永遠の歌 永遠の星 永遠の愛 守り続けたい永遠の歌 永遠の星 永遠の愛 限りない思い永遠の歌 永遠の星 永遠の愛 君に渡したい 永遠の歌 永遠の星 永遠の愛 一つ種を蒔こう永遠の歌 永遠の星 永遠の愛 水を分かち飲もう永遠の歌 永遠の星 永遠の愛 じっと耳を澄ませ永遠の歌 永遠の星 永遠の愛 誰も独りじゃない 永遠の歌 永遠の星 永遠の愛 遥か続く道永遠の
大雪の日遠いオアシスで 頻りに手を洗う人よ奪ったのか 流したのか 埋ずめたのか 祈ったのか多分そうだろう No… ころんだ人の数 ひしゃげた車の数溜息まじりに見る雪の空 大雪の日密かに地下室で 祭りを企てる人よ撃たれたからライバルは 花束を貰えたのか多分そうだろう No… 妙に真剣に空手の稽古をする男の姿がある雪の原 大雪の日それまで見も知らぬ 長い片仮名の国で暗闇が光った時 埃っ
何かが待っているわけでもなく絶望を抱えているわけでもないさほどの意味があるわけじゃない船に乗り合わせたのは 偶然のことおかしなことだけど あてどないことだけどそれでも船には 夢が乗っているSail away, sail away 長い夢の船出きみの夢と 僕の夢を乗せ 長い航海に出る 子供が聞く「船長は誰?」大人は答えられず 船は進むわだかまりの中に 笑顔を見せ盃の中に 言葉を沈めるおかしなことだけど あて
そこに小さな街があってそこにささやかな生活がある 街に小さな波止場があって街に小さな飛行場があって街に小さな停車場がある それはしあわせの街それはしあわせの人々 いつかどこかで何かが起きて波止場には船が来なくなった飛行場には飛行機が来なくなった停車場には汽車が来なくなった いつかどこかで何かが起きて小さな街は捨てられたいつかどこかで何かが起きて小さな街は忘れられた それは遠くの街それは遠い人々 捨てられても忘
春は 日傘の 其の上に白い日射しが 降り積もる独り芝居も もうはねたさよなら町は 行き止まり差した日傘の 其の中に想い出ばかり 降り積もる 夏は 祭りの 人々のやぐらのもとに 舞い集うよしや 心が 出掛けてもさよなら町は 行き止まり 耳を かすめる 口笛はあの日からなる “まつりうた”
さよならだけが人生ならばまた来る春は何だろうはるかなはるかな地の果てに咲いてる野の百合何だろう さよならだけが人生ならばめぐりあう日は何だろうやさしいやさしい夕焼とふたりの愛は何だろう さよならだけが人生ならば建てたわが家は何だろうさみしいさみしい平原にともす灯りは何だろう さよならだけが人生ならば
キングサーモン 川面を跳ねて白い息を吐けば辺りは 愈々 寒くなるオホーツクの果て 波の上にユラリユラユラそんな 小さな島がある 橋の上で 僕は手袋や 帽子の上から浸み透る寒さに打たれて立ち嫡むその時 きっと キングサーモン 忘れているよ氷の夜が来ればおまえの行き場が 消えて行くオホーツクの果て 波の上にユラリユラユラそんな 小さな島がある 橋の上で 僕は眠りながら 考える キングサーモンの熱いステーキが食
なだらかな坂道をくるまが登って行く坂の下には私の家がある大きな木の葉が空を隠している あたたかい風がくるまのうしろで吹く坂の下には私の家がある静かな昼下がり誰かの声がする 君がかかえている絵の中の君がかいたつつましい絵の中の さわやかな春が通り過ぎて行く坂の下には私の家がある大きな木の葉が空を隠している
小さな どうぶつえんおりの外を 雀が 飛びまわるおりの外を ねずみが走りまわるおりの中で 僕は 日向ばっこ小さな動物園お日様 ギラッギラ 小さな どうぶつえんおりの名札に 書かれた文字はひぐま しか たぬき きつね ふくろう オットセイ勿論にゅうじょうむりょうです小さな動物園粉雪 チラッチラ 小さな どうぶつえんぼくの心の中で膨らんでいくおりの中で 僕は 日向ぼっこ側に クジラの骨が横たわっている小さな
あなたは しばらく窓の外を 見ていた遥か遥か 南の街で……私は きっと人波の中を 歩いている遥か遥か 南の街で……暖かい雨が降るというホワンポウエルの街であなたは深く 息をついた あなたは やがて本の上に 目を落とす遥か遥か 南の街で……私は きっと人波の中を 歩いている遥か遥か 南の街で……暖かい雨が降るというホワンポウエルの街であなたは深く 息をついた
暑い夏の盛り場をボクタチ うきうき歩いたネオンの隙間を 摺り抜けてはどうしても 真直ぐに歩けない 賑やかに 賑やかに出来るさ 賑やかに“長いドレスが欲しいなああの飾り窓の……”ポツンとひと言 心の中に夢の径をたどってそっと収まるいつかの夏に そんな言葉 暑い夏の真夜中にボクタチ とつぜん気が付くダルイ体を タタミの上に危なっかしく投げ出したそのあとでひっそりと ひっそりと出来るさ ひっそりと“カレーラ
おもちゃの汽車ホラ世界 ホラひた走れ煙草を吸う 僕の足もとからテレビを見ている君のひざがしらへ おもちゃの汽車ホラ世界 ホラひた走れ壁の大きな 地図の上のシベリア鉄道を なぞって走れ おもちゃの汽車ホラ世界 ホラひた走れギターをひいてる僕の足もとから編物をしている君のひざがしらへ おもちゃの汽車ホラ世界 ホラひた走れこたつのトンネルくぐり抜ければ朝を めがけて 夢の中 おもちゃの汽車ホラ世界 ホラひた走れ
ぼくのこいびとはサーカスのキラキラ衣装の曲芸師小さな体が宙返りブランコからブランコへ宙返り高鳴る胸を押えてはきょうの“呼び物”さジンタにのってクルッと回れば拍手喝采クルッと回れば地球も回わるフンワリ飛んで フンワリ浮かんで ぼくのこいびとはサーカスのフルサト忘れた曲芸師小さな体が宙返りブランコからブランコへ宙返り最後の客が帰ったら夜が明けるまで次の手を祭りが終わればいつもと同じトラックに揺られて街か
「下町は田舎みたいだ」って車に乗り合わせた女の子が言う下町育ちの小室さんは「成程……」と、うなずく道産児の僕は「そうかな……」と、首をかしげる 田舎の縁日には肌寒い夏の空を 流星花火が飛び交っていた そいつが違うと 思うのだ
印度の街を象にのって毎日どこかへ 行くのです麦ワラ帽子と大きな荷物一緒にテクテク 日溜りをカスタネットがカタカタとマンドリンがチリチリと背中で笑っているのです 印度の街を象にのって毎日どこかへ行くのです今日もテクテク 日溜りやまたはユラユラ 月の夜光りと影がくり返し又くり返し通りすぎ私の心に 絵を書いた 印度の街を象にのって毎日どこかへ行くのです遠い昔のママゴトや明日の天気のことなどを神様のように ユ
雨が空から降れば想い出は 地面にしみこむ雨が シトシト降れば想い出は シトシトにじむ黒いコーモリ傘をさして街を歩けばあの街は 雨の中 この街も 雨の中電信柱も ポストも フルサトも 雨の中しょうがない 雨の日はしょうがない公園のベンチでひとりおさかなを つればおさかなもまた 雨の中しょうがない 雨の日は しょうがないしょうがない 雨の日は しょうがない
西の方に 行けたなら僕は カリカリと 西瓜を食べる残った種が スクスクと伸びて心の中に 育っていくだろう擦切れた レコードと うずもれたタマシイがひとりぼっちで うかれだして寂しいお祭りを始めるだろう 西の方に 行けたなら僕は カリカリと 西瓜を食べる黒い大きな サングラスでやっと僕は お日様からのがれてひとりぼっちは嫌だけど やさしい言葉もいらないさ広い砂漠の 真ン中で寂しいお祭りを始めるだろう
面影橋から 天満橋天満橋から 日影橋季節はずれの 風に乗り季節はずれの 赤とんぼ流してあげよか 大淀に切って捨てよか 大淀に いにしえ坂から わらべ坂わらべ坂から 五番坂春は何処から 来るかしら風に吹かれて 来るかしらめぐりめぐる 想い出に歌を忘れた 影法師