能登の女 – 伊奈木紫乃

能登の女に 惚れたなら
真冬に忍んで 来るがいい
荒磯(あらそ)に 波の花が飛び
魂(こころ)を奪えと そそのかす
あぁ…わたし 何があっても 逢いたい
逢いたい男が いるのです

能登の女が 欲しければ
抱いて一冬(ひとふゆ) 越せばいい
雷鳴 日本海(うみ)にとどろいて
命をもぎ取る 風が吹く
あぁ…わたし 罪を承知で 夜通し
夜通し恋舟 漕ぐのです

能登の女を 捨てるなら
赤子を孕(はら)ませ 去るがいい
地吹雪 夜ごと吹き荒れて
男のあやまち 隠すから
あぁ…わたし 一生一度の 極楽
極楽参りで いいのです

あぁ…わたし 何があっても 逢いたい
逢いたい男が いるのです