洒落男 – 二村定一

俺は村中で一番
モボだといわれた男
うぬぼれのぼせて得意顔
東京は銀座へと来た

そもそもその時のスタイル
青シャツに真赤なネクタイ
山高シャッポにロイド眼鏡(めがね)
ダブダブなセーラーのズボン

わが輩(はい)の見染めた彼女
黒い眸(ひとみ)でボップヘアー
背が低くて肉体美
おまけに足までが太い
馴れ染めの始めはカフェー
この家は妾(わたし)の店よ
カクテルにウイスキーどちらにしましょ
遠慮するなんて水臭いわ

いわれるままに二三杯
笑顔につられてもう一杯
女はほんのり桜色
エッヘッヘ しめたぞもう一杯
君は知ってるかい僕の
親爺は地主で村長
村長は金持で 伜(せがれ)の僕は
独身でいまだに一人

アラマアそれは素敵
名誉とお金があるなら
たとえ男がまずくても
妾はあなたが好きよ
おおいとしのものよ
俺の体はふるえる
お前とならばどこまでも
死んでも離れはせぬ

夢かうつつかその時
飛び込んだ女の亭主
物も言わずに拳固の嵐
なぐられた我輩は気絶
財布も時計もとられ
だいじな女はいない
こわいところは東京の銀座
泣くに泣かれぬモボ