合羽からげて 三度笠どこを塒(ねぐら)の 渡り鳥愚痴じゃなけれど この俺にゃ帰る瀬もない伊豆の下田の 灯が恋し意地に生きるが 男だと胸にきかせて 旅ぐらし三月三年 今もなお思い切れずに残る未練が 泣いている払い除(の)けても 降りかゝる何を恨みの 雪しぐれ俺も鯉名の 銀平さ抜くか長脇差(ながどす)ぬけば白刃に 血の吹雪
むかし親父が 戦地で出した金じゃ買えない このハガキ幼い頃の 姉さん宛ての「ゲンキデ アソンデ オリマスカ」わが子を思う 親心俺は初めて 読んだのさ合歓(ねむ)の花の絵 一輪添えて愛を伝えた 牡丹江(ぼたんこう)会いたくなって 抱き上げたくて「シャシンヲ マイニチ ミテイマス」手書きの文字の 懐かしさ雨か涙か 染みた跡辛いことには なんにも触れず胸に納めた 心意気仕舞いに一つ 案じたことは「カゼナ
酔ってくだまく 父(とと)さの声を逃げて飛び出しゃ 吹雪(ふぶき)の夜道つらい気持ちは わかっちゃいるが俺(おい)らばかりに あゝ なぜあたるこんなときには 母(かか)さが恋しなんで俺らを 残して死んだ呼んでみたって ちぎれて消える星のかけらも あゝ 見えぬ空徳利(とくり)かこった 凍(しば)れる指に岩手おろしが じんじとしみるたったふたりの 親子であれば涙ぬぐって あゝ もどる道
倖せひとつ おまえにやれずうしろ姿を 見送ったあゝあの日も… こんな雨だった出船の汽笛が 遠くで哭(な)けば思いだすんだ… 雨降る波止場ポツリと点(とも)る 桟橋あかり何故か目頭 熱くなるあゝあの日も… こんな雨だった歳月(つきひ)は過ぎても むかしの笑顔胸で揺れてる… 雨降る波止場男は一度 愛したおんな忘れられない 忘れないあゝあの日も… こんな雨だったいまさら逢えない おまえの名前今も呼んでる
あんなに愛した ふたりじゃないかなんで悲しい ことを云う雨の居酒屋 お馴染み横丁男ごころは どしゃ降りなのさ別れるなんて 云うんじゃないよ未練というのじゃ ないんだけれど他のおんなじゃ 駄目なのさ雨の居酒屋 気まぐれ夜風二度とかえらぬ 果敢(はか)ない恋さなぐさめなんか 聞きたかないよどこでも行きなよ 忘れてやるさ馬鹿な男の 痩(や)せ我慢雨の居酒屋 涙のグラス胸の芯まで ずぶ濡れなのさ倖せどうか
酒場は男の 燈台といつか誰かが 云っていたこころ時化(しけ)てる 路地裏でみつけた提灯(あかり)の 暖かさ生きぬく生命(いのち)の 灯(ひ)がともる徳利を並べて ゆらゆらと酔えば一夜(いちや)の 酒の舟遠い彼方で 呼ぶものは可愛いあの娘の あの胸かそれとも忘れた あの夢か嵐の夜更けが 過ぎたなら凪(なぎ)の夜明けが 来るという溺れかけてた 俺だけど無情(つめたい)ばかりの 都会(まち)じゃない情け
波の背の背に ゆられてゆれて月の潮路の かえり船霞む故国よ 小島の沖じゃ夢もわびしく よみがえる捨てた未練が 未練となって今も昔の 切なさよ瞼合わせりゃ 瞼に浮ぶ霧の波止場の 銅鑼(どら)の音熱い涙も 故国に着けば嬉し涙と 変わるだろ鴎行くなら 男の心せめてあの娘に 伝えてよ
男一途の火の恋を何んで涙でけされよう未練ばかりがただつのる夜の暗さを はしご酒浴びておぼれてなお酔えぬ酒のにがさをかみしめる露地の屋台の灯にさえも男心が 泣ける夜涙ぐんでた あの顔になんで嘘などあるもんか噂なんだぜ 噂だと胸にきかせる はしご酒
千両万両 積んだとて銭じゃ買えない 人ごころ受けた情の 数々に上州子鴉 泣いて居ります泣いて居ります この通り「わしゃア姐さんのようないい人に、めぐり逢ったのは初めてだ、はい、はい、きっと成ります。横綱になった姿を姐さんに見て貰います。そしてなア、わしゃ死んだおっ母さんの御墓の前で立派な土俵入りがしたい……。」野暮な浮世の うら表教えこまれて 一昔夢でござんす なにもかも角力(すもう)修業も 今じ
逢いたかったぜ 三年振りに逢えてうれしや呑もうじゃないか昔なじみの 昔なじみのお前と俺さ男同志で 酒くみかわす町の場末の 縄のれん生まれ故郷の 思い出話今宵しみじみ語ろじゃないか昔なじみの 昔なじみのお前と俺さ今度あの娘に 出逢ったならば無事(まめ)でいるよと 言ってくれ誰が流すか ギターの唄に遠い思い出忍ぼじゃないか昔なじみの 昔なじみのお前と俺さ夢が欲しさに 小雨の路地で泣いたあの日が なつか
かけた情が いつわりならばなんで濡れよか 男の胸がかつら下地に ともしび揺れていつか浮き名の こぼれ紅好きといおうか 嫌いといおうか嘘と誠は 両花道よ仇な夜風に まただまされてほろり落とした 舞い扇誰の涙か 二片三片(ふたひらみひら)まわり舞台に 散る花片よ恋は一筋 生命(いのち)にかけてなんの恐かろ 小判鮫
海道名物 数あれど三河音頭に 打ち太鼓ちょいと太田の 仁吉どん後ろ姿の 粋なこと吉良の港は おぼろ月泣けば乱れる 黒髪の赤いてがらも 痛ましやお菊十八 恋女房引くに引かれぬ 意地の道止めて呉れるな 名がすたるいやな渡世の 一本刀辛い別れを なぜ切らぬ嫁と呼ばれて 未だ三月ほんに儚(はか)ない 夢のあと行かせともなや 荒神(こうじん)山へ行けば血の雨 涙雨
どこへ飛ぶのか 次男坊鴉笠にみぞれの 散る中をなまじ小粋に 別れたせいか日光街道の 日光街道の灯がうるむ人が目をむく さむらいやくざお奉行さまから 賭場(とば)あらし泥溝(どぶ)の世界に 何故身を投げるわけはあの娘の わけはあの娘の瞳(め)に聞きな恋が切ない 次男坊鴉逢うて三年 三度笠なんの今更 旗本ぐらしどうせ半目(はんめ)と どうせ半目と出たものを
利根の利根の川風 よしきりの声が冷たく 身をせめるこれが浮世か見てはいけない 西空見れば江戸へ江戸へひと刷毛 あかね雲「佐原囃子が聴こえてくらあ想い出すなア…、御玉ヶ池の千葉道場か、うふ…。平手造酒も、今じゃやくざの用心棒、人生裏街道の枯落葉か。」義理の義理の夜風に さらされて月よお前も 泣きたかろこゝろみだれて抜いたすすきを 奥歯で噛んだ男男泪の 落し差し「止めて下さるな、妙心殿。落ちぶれ果てて
情け知らずと わらわば笑えひとにゃ見せない 男の泪どうせ俺らは 玄海灘の波に浮寝の かもめ鳥紅い灯(ほ)かげの グラスに浮ぶ影が切ない 夜更けのキャバレー酔うて歌えど 晴れない胸はドラよお前が 知るばかり嵐吹きまく 玄海越えて男船乗り 往く道ゃひとつ雲の切れ間に キラリと光る星がたよりの 人生さ
白鷺は 小首かしげて 水の中わたしと おまえはエー それそれ そじゃないかピイチク パアチク 深い仲白鷺の羽も濡れます 恋ゆえに吉原田圃(たんぼ)のエー それそれ そじゃないかピイチク パアチク 春の雨命がけ 慈悲じゃ情けじゃここ明けて今夜は 逢わなきゃエー それそれ そじゃないかピイチク パアチク こがれ死にゆるしてね わるいわたしの別れぐせ酔わなきゃ 拗(す)ねたりエー それそれ そじゃないか
好いた女房に 三下(みくだ)り半(はん)を投げて長脇差(ながどす) 永の旅怨(うら)むまいぞえ 俺等のことはまたの浮世で 逢うまでは惚れていながら 惚れない素振りそれがやくざの 恋とやら二度と添うまい 街道がらす阿呆(あほう)阿呆で 旅ぐらし泣いてなるかと 心に誓や誓う矢先に またほろり馬鹿を承知の 俺等の胸を何故に泣かすか 今朝の風
軒下三寸 借りうけまして申しあげます おっ母さんたった一言 忠太郎と呼んでくだせぇ 呼んでくだせぇ たのみやす(台詞)おかみさん、今何とか言いなすったね親子の名のりが したかったら堅気の姿で尋ねて来いと言いなすったが笑わしちゃいけねえぜ 親にはぐれた子雀がぐれたを叱るは 無理な話しよ愚痴じゃねぇ 未練じゃねぇおかみさん 俺の言うことを よく聞きなせぇ尋ね 尋ねた母親に 倅と呼んでもらえぬようなこん
あん時ゃどしゃ降り 雨ん中胸をはずませ 濡れて待ってた 街の角(かど)ああ 初恋っていう奴(やつ)ぁすばらしいもんさ遠い日のこと みんな夢ひとりしみじみ 思い出してる 雨ん中あん時ゃどしゃ降り 雨の中離れられずに 濡れて歩いた どこまでもああ 別れるっていう奴ぁたまんないもんさ辛い運命(さだめ)を 恨んだよひとりしみじみ 思い出してる 雨ん中あん時ゃどしゃ降り 雨ん中やけのやんぱち 濡れて泣いたぜ
影か柳か 勘太郎さんか伊那は七谷 糸ひく煙り棄てて別れた 故郷の月にしのぶ今宵の ほととぎす形(なり)はやくざに やつれていても月よ見てくれ 心の錦生まれ変って 天竜の水にうつす男の 晴れ姿菊は栄える 葵は枯れる桑を摘む頃 逢おうじゃないか霧に消えゆく 一本刀泣いて見送る 紅つつじ
ひとりに戻る だけなのと淋(さび)しく微笑(わら)って 眸(め)を伏せた倖せひとつも やれないでバカな男(やつ)だよ 身をひいたああ 木枯(かぜ)がこころを吹きぬける東京無情甘えるように 背伸びしてネクタイなおして くれた奴あなたは忘れて いいけれどきっとわたしは 忘れないああ そんな言葉が胸を刺す東京無情煙草のけむり 瞳(め)で追えば恋しいあいつの 笑顔(かお)になるこの世で添えない ふたりなら
男のこころは 一夜(いちや)で変わる女は一途に 愛を追う水の都を さまよい往(ゆ)けば夢のかけらか 七色ネオン涙ながした 浪花川一度はいのちと 思ったひとをおんなは一生 憎めない夜の向こうに 面影追えば浮いて沈んだ この世の運命(さだめ)今日も見ている 浪花川別れたあなたに ふたたび逢える信じて待つのよ 戎橋(はし)の上にごり水でも 生きてる限りきっと掴める 倖せひとつ明日(あす)へ流れる 浪花川
さよなら さよならさよならなんて いやですとすねたあの娘の泪が 背中にからむ水の都の とまり木づたい呑む酒は 呑む酒は吐息まじりの 大阪無情おんなの おんなのおんなの過去(きず)も 抱けないで二度と惚れたりするなと 夜風がなじるふたり通った 馴染みの酒場たずねても たずねても夢は散(ち)り散(ぢ)り 大阪無情倖せ 倖せ倖せならば いいけれどどこかやつれた姿が 瞼をよぎる水に七色 ネオンの花は浮かれ
中洲(なかす)のねおんに 咲く花は朝を待たずに 散る宿命(さだめ)うすい倖せ 博多川それでも誰かに また縋(すが)り恋をするのも 女ゆえ人形小路(しょうじ)の あのひとは妻も子もある ひとだった涙ながした 博多川世間の噂に 指さされ耐えてゆくのも 愛のため明日(あした)は逢わせて いい男(ひと)に寿橋(はし)のたもとで 手を合わす夜風身にしむ 博多川傷つき転んで また起きて夢をみるのも 女ゆえ
人が生きると 云うことは重荷を背負い 歩く旅時代おくれの 不器用ものが我慢に耐えた 幾月日いのちの時間(とき)を 刻んでた過去を振り向く… 男の時計たとえ一秒 一分も一緒にいたい 女(ひと)だったいつか運命(さだめ)に 裂かれたけれど今でも胸の 歯車がおまえに廻る 針をさす恋に未練な… 男の時計永い一生 雨風にこころが錆(さ)びる こともある夢の振り子は 死ぬまで止(と)めぬも一度ネジを 巻き直し
酒は酔うため あるものさ若いなりして 今夜の俺は意気地がないぜ 泣いてるぜぐちを肴に のむ酒じゃ露地ののれんに すまないね…恋はほどよく するものさ虫もころさぬ 可愛ゆい顔であの娘は派手な あそび花俺の負けだよ くやしいがおんなという奴ァ つかめない…これが苦労と いうものさ右で拾って 左で捨てる明日があるさ ゆめがあるすぐに止むだろ
男の胸の 古い地図ひとり覗(のぞ)けば また浮かぶ遠い故郷(ふるさと) あの笑顔いつも何かに 挫折(つまず)くたびにいのち支えて 生きてきた…こころに消えぬ あの女過去に帰れる 汽車はない今は誰かに 嫁いだか惚れていりゃこそ 口にはだせぬ恋もあるのさ 男には…曲がった川も いつの日か青い海原(うみ)へと 流れこむ俺の人生 道なかば急(せ)かずあせらず 甘えず媚(こ)びずきっと咲かすさ 夢ひとつ…
好きで呑んでる お酒じゃないわひとりが淋しい 片恋酒よ遊び上手(じょうず)な あなたでも噂を聞く度 逢いたくてつらいのよ つらいのよバカな女と 言われても忘れられない 恋だから面影グラスに 忍び泣く荒れた生活(くらし)の 今日この頃は酔う程未練が 身にしみるのよ夢で激しく 燃えるよりやさしい強さで 抱きしめて欲しいのよ 欲しいのよバカな女と 言われても忘れれられない 恋だから面影グラスに 忍び泣く
北の新地の 片恋い月は雨を呼んでる なみだ月お願いわたしを あなたあなたあなた棄てないであても頼りも ないけれど尽くしきりたい 大阪夜曲その場かぎりの やさしさだってうそを頼りに 生きられるお願いわたしを あなたあなたあなた棄てないで古いおんなと 言われてもついてゆきたい 大阪夜曲恋の橋でも おんなの橋は渡りきれない 川ばかりお願いわたしを あなたあなたあなた棄てないで夢のとなりに
苦労承知で 一緒になったそれが浪花の 夫婦じゃないのあんたが泣く時 私も泣くと生きるつらさに 耐えながらついて来るのか なあお前俺にはすぎた 女房だよ花を大事に 育てて咲かすそんな女房に なれたらいいわあんたが死ぬ時 私も死ぬと指をからめて ひっそりと枕濡らして くれるのか俺にはすぎた 女房だよいつか二人で 肩寄せながらうれし涙を