靴紐が解けてる 木漏れ日は足を舐む息を吸う音だけ聞こえてる貴方は今立ち上がる 古びた椅子の上から柔らかい麻の匂いがする 遥か遠くへ まだ遠くへ僕らは身体も脱ぎ去ってまだ遠くへ 雲も越えてまだ向こうへ風に乗って僕の想像力という重力の向こうへまだ遠くへ まだ遠くへ海の方へ 靴紐が解けてる 蛇みたいに跳ね遊ぶ貴方の靴が気になる僕らは今歩き出す 潮風は肌を舐む手を引かれるままの道 さぁまだ遠くへ まだ遠くへ僕ら
路傍の月に吠える影一つ町を行く満ちることも知らないで夜はすっと深くまで 気が付けば人溜まりこの顔を眺めているおれの何がわかるかと獣の振りをする 一切合切放り出したいの生きているって教えてほしいの月に吠えるように歌えば嗚呼、鮮やかにアイスピックで地球を砕いてこの悪意で満たしてみたいの月に吠えるように歌えば嗚呼、我が儘にお前の想うが儘に 青白い路傍の月何処だろう、と人は言う誰にも見えていないのかこの醜い獣 指
水溜りに足を突っ込んで貴方は大きなあくびをする酷い嵐を呼んで欲しいんだこの空も吹き飛ばすほどの 風を待っていたんだ何もない生活はきっと退屈過ぎるから風を待っていたんだ風を待っていたんだ 吹けば青嵐言葉も飛ばしてしまえ誰も何も言えぬほど僕らを呑み込んでゆけ どっどど どどうど 風を呼ぶって本当なんだね目を丸くした僕がそう聞いたからぶっきらぼうに貴方は言った「何もかも思いのままだぜ」 風を待っていたんだ型に合っ
雨が降った 花が散ったただ染まった頬を想った僕はずっとバケツ一杯の月光を呑んでる本当なんだ 夜みたいで薄く透明な口触りでそうなんだ、って笑ってもいいけど 僕は君を待っている 夏が去った街は静か僕はやっと部屋に戻って夜になったこんな良い月を一人で見てる本当なんだ、昔の僕は涙が宝石で出来てたんだそうなんだ、って笑ってもいいけど 声はもうとっくに忘れた想い出も愛も死んだ風のない海辺を歩いたあの夏へ 僕はさよなら
ある朝、僕は気付いたんですが思ったよりもソファが狭いお金が足りないわけでもないけど家具屋は生活圏外そうして僕は思ったんですが隣の家なら徒歩一分何とかなると思った僕は包丁を持った 何にも満たされないなら行こう、僕らで全部奪うのさ紙みたいな理性なんてほら、飛ばしてしまえ神様、本当にこの世の全部が人に優しいんだったら少しくらいは僕らにくれたっていいじゃないですか ある昼、僕は思ったんですが死にゆく貴方に花を
高架橋を抜けたら雲の隙間に青が覗いた最近どうも暑いからただ風が吹くのを待ってた 木陰に座る何か頬に付く見上げれば頭上に咲いて散る はらり、僕らもう息も忘れて瞬きさえ億劫さぁ、今日さえ明日過去に変わるただ風を待つだから僕らもう声も忘れてさよならさえ億劫ただ花が降るだけ晴れり今、春吹雪 次の日も待ち合わせ花見の客も少なくなった春の匂いはもう止む今年も夏が来るのか 高架橋を抜けたら道の先に君が覗いた残りはどれだ
君は映画をずっと観ている誰一人もいない劇場で今思えばチープなセットで人のよく死ぬSF映画 いつか世界が真面になって、人の寿命さえ随分伸びて、死ねない世界になればいいのにね そしたら心以外は偽物だ言葉以外は偽物だ神様だって作品なんだから僕ら皆レプリカだいつか季節が過ぎ去って冷たくなって年老いてその時に 僕は映画をずっと観ているつまらないほどに薄い映画席を立ってからやっと気付くこれは僕を描いたドラマだ いつか
明日はきっと天気で 悪いことなんてないねタイムカードを押して僕は朝、目を開いた僕らは今日も買ってる 足りないものしかなくて靴を履きながら空想 空は高いのかな 貴方さえ 貴方さえこれはきっとわからないんだはにかむ顔が散らつく口を開けて風を食む 春が先 花ぐわし桜の散りぬるを眺む今、風を食む 棚の心は十五円 一つだけ売れ残った値引きのシールを貼って閉店時間を待った明日もきっと天気で 此処にも客が並んで二割引
他人に優しいあんたにこの心がわかるものか人を呪うのが心地良い、だから詩を書いていた朝の報道ニュースにいつか載ることが夢だったその為に包丁を研いでる 硝子を叩きつける音、何かの紙を破くこと、さよならの後の夕陽が美しいって、君だってわかるだろ 烏の歌に茜この孤独も今音に変わる面影に差した日暮れ爪先立つ、雲が焼ける、さよならが口を滑る 認められたい、愛したいこれが夢ってやつか何もしなくても叶えよ、早く、僕を満
夏の匂いがしてたあぜ道、ひとつ入道雲夜が近づくまで今日は歩いてみようよ隣の町の夜祭りに行くんだ 温い夜、誘蛾灯の日暮、鼻歌、軒先の風鈴、坂道を下りた向こう側、祭り屋台の憧憬夜が近付くまで今日は歩いてみようよ上を向いて歩いた、花が夜空に咲いてる 夏の匂いがしてたあぜ道のずっと向こうへ誰一人人の居ない街を探すんだねぇ、こんな生活はごめんだ さようなら、手を振る影一つ、夜待ち、鼻先のバス停思い出の中の風景はつ