お腹が空いてないお客様 – あべりょう

あの日 ママとボクは間違って高級レストランに
入ってしまった ママは一番安いミートソースを頼みました
「他にご注文はないですか?」と店員が聞きました
「すいません、お腹が空いてなくて…」とママは俯いたまま言いました

「お席料2000円頂きます」と店員が言った
「すいません、やっぱり帰ります」とママがボクの手を引いて席を立った
ボクの誕生日にボクを生んでくれた大好きなママが
知らない大人に責められて恥ずかしそうに笑う

ボクの手を強く強くギュッと握りしめ歩くその背中
今でも昨日の事のように思い出してしまう
あの日 母と子がボクの働く 高級レストランに
入ってきました 母は一番安いミートソースを頼みました

「他にご注文はないですか?」とマニュアル通りに聞く
「すいません、お腹が空いてなくて…」と彼女は俯いたままで言いました
「お席料2000円頂きます」と お客様に言う
「すいません、やっぱり帰ります」と 彼女が子どもを連れて席を立った

母の誕生日にプレゼントしたくて 初めてバイトして
知らない客に頭下げて 大人になった気がした
社会はサービスする人とサービスされる人でできてて
互いの想いを叶えることが仕事だと気づいた

キミの誕生日にキミを生んでくれた大好きなママも
知らない客に頭下げて キミを必死で育てる
キミの手を強く強くギュッと握りしめ歩くその背中
互いの気持ちにこたえることが家族だと気づいた

ボクの誕生日にボクを生んでくれた大好きなママが
知らない大人に責められて恥ずかしそうに笑う
ボクの手を強く強くギュッと握りしめ歩くその背中
今でも昨日の事のように思い出してしまう