長渕剛

耳かきの唄 – 長渕剛

徹底的に人間(ひと)にハメられた
昨日しこたま便所で吐いた
吐いても吐いても吐き足りず
ついに便器にへたりしゃがみこむ

突っ伏した俺の背中をさすりながら
舌を出してるお前が辛くて
あきれるほど腹ン中から涙が出たけど
ただ白い便器とお前のコロンが臭かったからだ

どうせ一回きりの人生なら
潔くかっさらわれてみるのもいいさ
馬鹿だと世間にののしられても
情けないほど女々しく泣くよりよっぽどましだ

信頼という言葉たちが浮き足立って逃げて行く
正直という言葉たちが茶色いバッグをぶら下げて逃げて行く
誠実という言葉たちがこの国では利用にすげ替わる
友情という言葉たちがこの国では裏切りに変わる

俺は今、渋谷駅前の信号機を待ち
ふとJeepの窓の外を見た
行き交う人々の頭の上で
俺の「過去(むかし)」と「現在(いま)」の顔がポスターになってた

けなげな不良学生たちがそれを指さし
『いつかの少年』をじっと見つめてた
初めてこの街をまともに歩いた
十七年前の俺に帰ろう

東京に出て来てから今までの俺の青春は
根こそぎ銭に換えられちまったけど
裏切り者の大泥棒たちも
あの頃は確かにマジだった

どうせ一生、男を張るなら変わらぬ大馬鹿者をつらぬこう
一生、男を張るなら被害者面して逃げるのはよそう
どうせ一生、男を張るならヤクザと呼ばれて上等だ
一生、男を張るなら銭のカラクリなどくそっくらえ

常識も非常識もないこの国では
差別とやっかみに全てをすり替える
同じ島国で生まれ育ったのに
貧しき心で弱き者をあざ笑う

変わってゆく者が利口なのか?
変わらぬ俺がマヌケなのか?
出口のない答を探し悩むより
俺に惚れてくれる奴を当たり前に愛そう

人間の“生き死に”さえも銭に換えるこの国だから
ありったけの命をたたいて今、叫ぶのだ
『すみません!毛玉のついた安い耳かきを突っ込んで
人間の声を聴こえるようにしてくれ!』

どうせ一生、男を張るなら変わらぬ大馬鹿者をつらぬこう
一生、男を張るなら被害者面して逃げるのはよそう
どうせ一生、男を張るならヤクザと呼ばれて上等だ
一生、男を張るなら銭のカラクリなどまっぴらだ

信頼という言葉たちが浮き足立って逃げて行く
正直という言葉たちが茶色いバッグをぶら下げて逃げて行く
誠実という言葉たちがこの国では利用にすげ替わる
友情という言葉たちがこの国では裏切りに変わる

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