相楽晴子

遠い恋人 – 相楽晴子

東京湾(とうきょうベイ)を見下ろすビルの
屋上で ふたりして 降る雨を見ていた
湾岸道路 光りの列は
この街のネックレス 切なさがにじむよ

好きに なっちゃいけないと わかっていたの
出逢った時 キスした時 抱かれた時

この胸が痛い 親友の恋人よ
そばに居ても愛は あの子のものなの

その笑顔ずるい 憎めない見つめかた
そして秘密だよと 口癖みたいに
つぶやいてあなた 遠くを見る

今日の現在(いま)だけ 楽しめばいい
うまくゆく恋なんて退屈と強がる
非常階段 手すりにもたれ
危なげなバレリーナ 爪先で踊るよ

後ろ指をさされても 奪いたいのよ
馬鹿な嘘よ ぜんぶ嘘よ いいえ本気

この胸が痛い 親友の恋人よ
どんな夜も心 あの子のものなの

会いたくて辛い 悲しみが増えるだけ
衿にまわす腕の ほどきかたさえも
知らないで私 あなたを見る

この胸が痛い 親友の恋人よ
そばに居ても愛は あの子のものなの

抱きしめて強く 悲しみよ雨になれ
悪い遊びだねと ひとごとみたいに
ささやいてあなた 私を見る

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