河合奈保子

十六夜物語 – 河合奈保子

恋に落ちた女(ひと)は月ですか
満ちては欠ける 夢をかさねて
逢いたいから逢わないあなたへ
いざよう月

悲しむ人ならひとりでいい
ためらう心を隠しきれず迷うなら

一度だけ接吻で傷をつけて下さい
もう誰も愛せないほど抱きしめて あゝ

恋が始まる十三夜から
涙を数え 月は移ろい
逢いたくても逢えないあなたへ
いざよう月

遠くでやさしく見える波が
切なさの際(きわ)で砕け白い華になる

指先で紅をひくやるせなさしずめても
渡れない夢の手前であなたを想う

恋に落ちた女(ひと)は月ですか
満ちては欠ける夢をかさねて
逢いたいから逢わないあなたへ
いざよう月

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