槇原敬之

運命の人 – 槇原敬之

残念な事に君は
僕の友人に恋してて
彼の事を聞きだそうと
誘われた焼き鳥屋を出た所
帰り道が同じ方向で
送ってけるのは嬉しいけれど
家の前に来ると改まって
礼を言う君がいつも少し寂しい

君が時々ぼんやり
遠くを見てため息付いてる
気持ち痛いほどわかる
君の事考えている僕と同じだ

他の誰かの事を
好きだと知った後でも
いきなり嫌いになれるはずもなく
当面は君を好きなまま
ハシカみたいな恋だったと
笑える時が来るのかな
それともこのまま
一人で君を想いながら
年を取って行くのかな

見送る道のウィンドウは
秋冬の服を着せられた
マネキンが並んでいて
ダブって僕らが映っている
こういう時どう思うの?とか
どっち貰う方が嬉しいの?とか
男心のサンプリングに
必死な横顔に笑えた

はぐらかす事も出来るけど
真面目に答えてしまうのは
君の恋が上手く行けばいいとも思う
僕もいるから

他の誰かの事を
好きだと知った後でも
いきなり嫌いになれるはずもなく
当面は君を好きなまま
この人こそがきっと
運命の人に違いないと
出会うその度に
思ってしまうのが
恋のやっかいな所だ

夏の終わりの匂いがする
風が今日この街に吹いた
移ろう季節の中で
僕は移ろわない気持ちもてあましている
ハシカみたいな恋だったと
笑える時が来るのかな
それともこのまま
一人で君を想いながら
年を取って行くのかな

まぁ たぶんそれはないよな
ちゃんと気付けるかな
運命の人と会ったら
君だったらいいのに

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