平野愛子

霧の中の女 – 平野愛子

霧にかくれていつまでも
君を待つ夜の 街の角
あゝ知っているのは 柳だけ
胸にいつまでも 消えない
かなしいあの言葉
グッドバイ グッドバイ

霧に濡れてる 飾り窓
君の名を書く 細い指
あゝ知っているのは 妾(わたし)だけ
胸にいつまでも 消えない
やさしいあの言葉
グッドナイト グッドナイト

霧に溶けゆく 七彩(なないろ)の
君はネオンか 恋の虹
あゝ知っているのは 貴方だけ
胸にいつまでも 消えない
さみしいあの言葉
グッドバイ グッドバイ

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波止場の蔭で – 平野愛子

あの人は行ってしまった海の彼方へわたしに残したのはさようならと言う言葉だけあの人は海の男 わたしは陸の女しょせん別れる 運命(さだめ)でしたあの人と共に暮した楽

さよなら銀座 – 平野愛子

バイバイさようならネオンが燃える並木路木蔭に佇む影一つけれど誰をも待つじゃない私は独り 独りぼっちだけれど誰も知らない夢があるさよなら銀座よ さようならバイバイ

幻の港 – 平野愛子

霧の夜は港も暗いひとり待つわたしの心にもしのび入る波止場の夜霧波の間にゆらめくランタンはあの夜(よる)の夢の名残りかそゞろ吹く風にはかなく消え残るは幻むせび泣く

待ちわびて – 平野愛子

旅路の果ての つばくらめひとりやつれて 泣いているああ あの人は雪の荒野か 南の島か待ちわびて 待ちわびて乳房を抱けば この身が細る港の夜の 赤い花涙こらえて 

白い船のいる港 – 平野愛子

青い海に 白い船今日も見えるけど恋し姿 何故か見えぬ待てどまだ見えぬ独り占う カードを棄てて遥か彼方の船を見て 涙流したの月の港 白い船灯り点るけど恋し姿 見え

お新恋唄 – 平野愛子

燃えてかなしや 緋縮緬(ひぢりめん)わが身にわが身が 分らない甲斐ない恋と 知りながら命をかけて 好きな人惚れていながら 惚れてると云わずに辛棒 し切るのもおま

青い夜霧が – 平野愛子

青い夜霧が 身に沁むキャバレー媚(こび)は売っても 売らりょうか心甘い小唄や すんなり腰に惚れりゃ危い 命取り何(なに)がほしいの 欲しけりゃやるさ港女は 気短

愛の紅椿 – 平野愛子

強く吹いても 情がしみる風が咲かせる 紅椿いちど開けば ほころべば芯の芯から 燃えて咲くそして ああ 君の御胸(みむね)を飾れたらいとし悩みの 愛の花弱く吹いて

夜霧の砂丘 – 平野愛子

遠くの沖で汽笛が咽(むせ)ぶ 夜霧が青いこの儘(まま)で この儘でどうなることかしらあなたは愛しているかしらわたしを想うているかしらああ 今宵も霧が降る沁々(し

花の雨 – 平野愛子

恋にやつれて 泣かされて弾けばギターの トレモロも咽(むせ)び泣くよな 花の雨今度逢うのは いつの夜逢うた嬉しさ すぐ消えて淋しい別れの いま続くほせど冷たき 

泣かないで – 平野愛子

星を数えた この指で涙ぬぐうて とかすは紅よ泣かないで 泣かないで風にまかせて行けば あいてる夜の門面(おも)はやつれて 影深く閉じるまぶたに 浮かぶはあの日泣

君待てども – 平野愛子

君待てども 君待てどもまだ来ぬ宵 わびしき宵窓辺の花 一つの花蒼白きバラいとしその面影 香り今は失せぬ諦めましょう 諦めましょうわたしはひとり君待てども 君待て

港が見える丘 – 平野愛子

あなたと二人で来た丘は港が見える丘色褪せた桜唯一つ寂しく咲いていた船の汽笛咽(むせ)び泣けばチラリホラリと花片(はなびら)あなたと私に降りかかる春の午後でしたあ

あなたは知らない – 平野愛子

沈む夕陽も 紅(くれない)の想いを残す あかね雲私の心は 風になり後を追うのを あなたは知らない街も牧場も 照らす陽の心を花が 知らぬよに日暮れてテラスに しぼ

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