工藤順子

月下家族 – 工藤順子

夜に隠れてやって来る 緋色のサンダル長い裾
砂色ショール靡かせて 彼女は家族に逢いに空地へ急ぐ
(三毛猫 トラ猫 親猫 子猫 白 黒 シャム ペルシャ)

焼跡の町駆け抜けた 遠いあの日の同胞(とも)達が
孫と食卓囲む頃 彼女は両手に重いビニール袋
(猫缶 カリカリ カニかま 煮干 燗冷牛乳)

夜空の天井 満月の電灯
空地の床には 枯草のマクラメ
ほんの一時 身を寄せ合って
月下に集う 彼女の家族

ピアノの先生だったとか 何処かのマダムだったとか
路地を噂が転げてく 彼女のお陰で町は野良猫だらけ
(立札 貼紙 町内会議 掲示板 回覧板)

刹那の団欒食卓は 跡形も無く掃除して
行き交う視線かいくぐり 彼女と家族は夜に散らばってゆく
(路地裏 公園 家庭菜園 屋根 塀 駐車場)

追い立てられても この星が寝床
歩いて倒れて この星に還る
ほんの一時 身を寄せ合って
月下に集う 彼女の家族

ラララララララ…
ラララララララ…

遊牧民も 種蒔く人も
地球に眠る 月下の家族

保健所員も 自治会長も
仕事熱心 月下の家族

旅立つ人も 跡継ぐ人も
皆悩める 月下の家族

海往く人も 空往く人も
逃げも隠れも 月下の家族

ラララララララ…
ラララララララ…

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