堀内孝雄

  • 冬の蝶 – 堀内孝雄

    愛を失くしたどうしが 寄り添うことをひとはやっぱり愛と 呼ぶのだろうか流行(はや)りの服を脱いだ 君の肌には誰がつけたのか 見えない傷あと“愛してた” “生きていた” “輝いていた”かすれ声のつぶやきは みんな過去形冬の蝶 冬の蝶ぼくの肌に とまれ 名前も教え合わずに 暮らせばいいさ摩天楼の森に 春が来るまでほどいた髪の香り 少女のようだいつかなつかしく 思い出すだろう“愛せるさ” “生きられるさ…

  • 裸樹 – 堀内孝雄

    語り終えた後で言い残した事が涙に姿変え時を移して散るくちびるに手を当てうつむいて黙って煙草の吸殻にあなたは瞳(め)を伏せる 何か言ってお願いだから心変わりを許されるのは責められるより辛すぎる 木の葉を脱いだ裸樹が北の星座に震えるように人は独りなんだね人は独りなんだねそんな淋しい言い方されて突き離すだけ辛すぎる さよならと問われて答えさえ出さずに諦めるあなたの弱さが悲しくて私の手を握り力ずくで引けば…

  • 愛染橋 – 堀内孝雄

    春一番が吹き荒れた後花を敷いた路地へ今日こそ返事聞かせてくれと問いつめられそうで あなた以上にやさしい人はいそうにもないけど結婚なんて旧い言葉に縛られたくなくて 橋の名は愛染橋ほほえんで渡れば恋がかなううつむけばそれきりとまどい橋 うちは淋しい女やからね愛なんてよう知らん時の流れも春のうららに渡りたい 渡れない 髪の芯まで飽きられる日が来ないとも限らずそしたらすぐに別れる勇気ありそうでなさそで 橋…

  • 涙を捨てる街 – 堀内孝雄

    悲しみのない 国があるなら海を渡って でかけたい風の波止場に トランクひとつさみしさだけを つめこんで 想い出ながす 河があるならあなたの優しさ 忘れたい愛をつづった 手紙の束もせせらぎ深く 沈めよう 涙を捨てる 街があるならいつか夜汽車で たずねたい星が窓辺に せつなく光るひとりぼっちの 旅をして さよならのない 愛があるならも一度だれか 愛したいそれは別れた あなたにどこかどこかよく似た 人で…

  • DON’T STOP MY LOVE – 堀内孝雄

    ブルーが君に 似合う色だとおしえた 男は誰哀しすぎるさ 恋の切れ端いまも 抱くなんて 甘いコロンが好きと君にささやいた 男は誰たった一度の恋の傷跡すべて 捨てたのかい 出逢って何かが 動いたら心がイエスと 叫んだのさ DON’T STOP MY LOVE 感じるままそらさないで 君の瞳DON’T STOP MY LOVEDON’T STOP MY LOVEまっす…

  • 孤高の鷹 – 堀内孝雄

    誰のようにも生きられず 誰のようにと生きもせず このたびの宿り かりそめの和み優しさに別れ ぬくもりにさらば夢覚めず 空しき心 まだ埋め切れず誰のようにも生きられず誰のようにと生きもせず梢の高み 孤高の鷹が心ならずの 爪を磨く荒野(あれの)の深み 孤独の鷹は終わり知らずの 狩りに飛ぶ このたびの命 思い為す運命(さだめ)好まずと言えど 戦いの嵐荒れ止まず 挑みの心 また湧き止まず誰のようにも生きら…

  • 愛を傷つけないで – 堀内孝雄

    愛を傷つけないで 別れがきても優しくされたこと 憶えているから愛を悲しまないで あしたがきてもすべては過ぎてゆく 時のせいだからLove is memory夢の中の短い絵物語Love is memory悲しみだけ昨日に閉じこめて 愛を引きとめないで 未練を誘う自由に生きること 教えてくれたのに愛をこまらせないで 想い出だけはあしたのむこう側 連れてはゆけないLove is memory夢の中で 終…

  • あなたが美しいのは – 堀内孝雄

    きっと初めての空を飛ぶ鳥の心映して誰の胸にもひたすら待ち望む時がある筈 いつか心を隠す重ね着をみんなはがして惑いひとつもない汗をかいてみたい筈 あなたが美しいのは愛されようとする時でなくあなたが美しいのはただ愛そうとする時 きっと霧深い海に沈ませた宝のように誰の胸にも変わらず色あせぬ夢があるもの いつか心の底に輝きをひとつ見つけて抱いて想いのまま泣いて笑ってみたいもの あなたが素晴らしいのは愛され…

  • 山河 – 堀内孝雄

    人は皆 山河に生まれ 抱かれ 挑み人は皆 山河を信じ 和(なご)み 愛す そこに 生命(いのち)をつなぎ 生命を刻むそして 終(つ)いには 山河に還る 顧(かえり)みて 恥じることない 足跡を山に 残したろうか永遠の水面(みなも)の光増す夢を 河に浮かべたろうか 愛する人の瞳に 愛する人の瞳に俺の山河は美しいかと美しいかと 歳月(としつき)は 心に積まれ 山と映り歳月(としつき)は 心に流れ 河を…

  • アメリカ橋トワィライト – 堀内孝雄

    昼さへ人影 まばらなこの橋誰とも分からぬトワィライト いつもの二人の 待ち合わせ場所古くて小さくて その名に不似合(ふにあ)いな 可愛いアメリカ橋 私の夢の時間でした 無口な水音 あえかな残照秘密の悦(よろこ)び トワィライト 都会になじまぬ 古びた家並(やなみ)急いだ身支度(みじたく)を 気にして落ち着けず 震えてアメリカ橋 貴方(あなた)を待った橋でした 時移り 街変わり 橋の向こうは夕映(ゆ…

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