井上喜久子

ウェンデにゃんのうた – 井上喜久子

ぼくの名前はウェンデにゃん
ちっちゃなぬいぐるみだから
いつもあの娘のかばんの中で
いつもあの娘を見守っているよ

特別におっちょこちょいらしい
あの娘は今朝も忘れ物して
バス停からあわてて家に戻って
おまけにつまずいて遅刻もしたよ

授業中まじめにノートを取ってる姿は感心だけど
文字を書くスピード遅すぎるのさ
黒板消しで消される瞬間
「あっ」という声出して笑われてる

ぼくの名前はウェンデにゃん
こんな名前でも犬なんだ
いつもあの娘のかばんの中で
いつもあの娘を見守っているよ

友達はぼくを見つけると
やだかわいいと手を伸ばすけど
喜んでいるのもつかのま ほとんどの子は
ぼくの顔フニフニくずして遊んで笑ってる

制服のポケットたまに恋愛小説しのばせて
ため息をついては夢見てるけど
そのたびにちっちゃなにきびを
鏡に映して悩んでる

あの娘の涙は見たくない
いつも笑顔でいてほしい
ぼくがそばについているかぎり
不幸災難 うしろ足で砂をかけるよ

ぼくの名前はウェンデにゃん
ちっちゃなぬいぐるみだから
いつもあの娘のかばんの中で
いつもあの娘を見守っているよ

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