「サヨナラ」 — 辛島美登里

あとどれくらい抱きあったら
「おやすみ」のキスにたどり着ける?
ビルの谷間 三角の空
風にさらされる木々のように

なぜ なぜ 好きなのに
一緒には 二人暮らせない

乗り継ぐだけのこの駅で
前ぶれもなく恋は始まって
互いの罪もわからないまま
あなたを愛してしまった

いたい場所と帰るべき場所
土曜の夕暮れは無口で
駐車場で迷ったふりは
一秒でも長くいたい それだけ

ため だめ きりがない
今日別れて 明日もう会いたい

「どちらか不幸になる前に
身を引くよ」とあなたは言うでしょう
人波 肩がぶつかるだけで
しゃがんで泣きたくなるのに

あなたか好きだから
悪い女になりたい でも
嘘をつくなんてできないし 嫌われる勇気もない

何も持たずに生まれたから
失うものなんてないはず
瞳をみつめ もしもあなたに
「サヨナラ」告げたら 本当の愛だと言えるの?