情夜灯 — 角川博

みれん涙を 手桶で流す
女ひとりの 仕舞い風呂
湯舟の窓には 情夜灯(じょうやとう)
あなただけしか 見せない肌を
なんでのぞくか ガラス越し

ひとつ枕は 寝付かれなくて
手酌(てじゃく)重ねる 燗冷(かんざ)まし
障子を照らすは 情夜灯(じょうやとう)
捨てるつもりの 想い出なのに
浮かぶ影絵の にくらしさ

愛を覚えた 女の肌が
夢で燃えたか 夜明け前
湯宿に名残りの 情夜灯(じょうやとう)
汽車の時間は まだあるけれど
梳(と)かす手櫛(てぐし)の みだれ髪