娘道成寺 — 市川由紀乃

恋の「いろは」は 誰からも
習わなくても 覚えます
募る思いを 知りながら
逃げる男の 憎らしさ
待って 待ってください あなた
娘ひとりの 道行(みちゆ)きは
桜吹雪も 石つぶて
越すに越せない
日高川(ひだかがわ)……道成寺(どうじょうじ)

初心な未通女(おぼこ)も 恋衣(こいごろも)
着れば情けに 溺れます
水じゃ消せない 未練火が
肌の隅まで 焼き尽くす
抱いて 抱いてください あなた
女ごころの 滝壺にゃ
白い大蛇(おろち)が とぐろ巻く
乱れ乱れる
京鹿(きょうか)の子(こ)……道成寺(どうじょうじ)

死んで 死んでください あなた
鐘に恨みの 数々を
捨ててあの世で 添い遂げる
女 煩悩
恋地獄……道成寺(どうじょうじ)